料理界は、あまりにもアクセルがかかりすぎて、どうもやっかいになった。セカンドシェフの群れから飛び出した、若手シェフが花開く時代。これには、涙と荷造りがつきものだ。あるシェフは、しょうもないテレビ番組に参加したばっかりに、汚名を浴びて、消え去っていく。ガストロノミーは、新しい才能が流れ星のように行きかう、高速道路のような状況になった。
薬学部出身、アマンディン・シェニョー Amandine Chaigneau は、料理に目覚めた途端、すばやく川を渡って、多種のコンクールに出場し、ル・ムーリス、ボキューズ・ドールを経験した後、33歳で、パラスホテル「ラファエル」の料理長に着任した。
内装は、限りなく古典的だが、年がたつに連れていい味が出てきた。僕らが知らないようなセレブが通う。アマンディンの料理がそこに介入したことは、何も驚くべきことではない。彼女の料理は、むしろ謙虚である。クラクションもならないし、大声も出さないし、残酷な言葉も聞こえてこない。
彼女の料理は、状況にあった料理、よく考察された料理、大人の料理だ。
彼女のプラス面はなんだろう?何もない。ただ、料理に表れる謙虚さ、盛り付け方法のやさしさ。彼女は、自分の料理を披露せずに、それに付き添うように仕上げる。メディアは、このかわいい女シェフを放ってはおかないだろう。ヴィーナスか、シンボルにでも飾り立てて、ボーダーシャツを着せて、カメラの前に立たせるに違いない。しかし、それでレストランが話題になるなら、いいことではないか。
Hotel Raphael
17, avenue Kléber
75016 Paris
Tel : 01 53 64 32 00
土日休
一人約100ユーロ
Photos / F.Simon