料理は、驚異そのものと言え、僕らをふるわせた。手長エビとカボチャのロワイヤル、栗のヴルーテ、カプティーノ仕立ては、新しくなった伝統料理のようなものを感じさせ、舌平目のブリゼ、ヴァン・ジョーヌのソースに白トリュフ添えは、ゆっくりとしてクリーミーな、ルンバダンスを思わせた。手長エビのごまパイ包み、カレーソースは、まるで、単色的風味の中で操られるテンポだった。
きっと、モダンな料理へと進む努力がなされているのだろうが、こちらには知覚できない。彼らの料理を、どの分類に入れたらいいのか、実際わからなかった。マチューとベルナール、息子と父親のたわいな争いもあるのだろう。前者は激高のなか、後者はフランス料理の完璧さを目指して、料理を作る。
店内の雰囲気は、特権客の一人に選ばれたような幸せムード。フランソワ=ジョゼフ・グラフによって仕立てられた装飾は、時代をこえても古びない。きっと、次世紀もこのまま変わらないだろう。押し殺したようなサービスは、前進後退を繰り返す、無声バレエのようだった。
魅了されながら、数百ユーロを奪われて店を後にする。それでも、後悔はない。ランブロワジーで食べた、という、自負のようなものに満足できて、しかもおいしかったのだから。
L'Ambroisie
9, place des Vosges
75004 Paris
Tel : 01 42 78 51 45
Photos/F.Simon