バスティーユ広場のそばにある、日本料理レストラン「イチョウ」へ、昼食がてら、味見に出かけた。
この店に関して、僕が面食らったことが2つある。
まず1つ目。店に入った所で、男が電話で話しているのはいいのだが、彼の明確な口調とそのボリュームのせいで、話の内容が全部こちらの耳に入ってきた。そればかりか、電話相手の、レアという女の声まで丸聞こえだった。
この点は、あまりよく試行錯誤されていないのだろう。客である僕らの会話には、ブレーキがかかり、完全に宙ぶらりんになってしまった。
問題のレアは、文句ばかりを並べる気質な上に、ご機嫌斜めな様子だったが、僕には、くじけずに再挑戦するサマリア人のようにも映った。その挙げ句、彼らの会話は、迷惑などころか面白いとさえ思ってしまった。
次に、熱狂に満ちたシェフがいた。生々しくて、活気があって、ちょっと心配性のエネルギーが溢れるシェフ。古風な温和調を好む僕にしても、この店は笑えた。生き生きとした料理は、少し神経質な熱烈さが、はみ出していたかもしれない。それはうまかったが、サーモンといちごの組み合わせなど、リスクの高いものもあった。
こちらを動揺させるような、両極性の中で、僕好みのまたとない時間が過ごせた。
また、おかしなことに、同じ週末に、僕は2度もこの男を見かけた。1度目がサンミシェル大通りにあるモノプリにて、そして翌日にはグラン・オーギュスタン通りにて。偶然ほど、心の踊る出来事はない。
Icho
3, rue des Tournelles - 75004 Paris
Tel : 01 44 78 03 92
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Photos/F.Simon
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