彼の俳優的容姿も一役買っている。大海の返し波に打たれたロバート・デニーロ。世界にかみついたり、そら豆やおんぼろ車やつまらないものを責め立てることに、疲れはれた男。ジャック・マキシマンは、今現存している偉大なシェフの内の一人である。どこかどっしりとしていて、怪獣的な性質をもつ。
映画祭会場の近郊に位置する、カンヌと書こうとして思わずミスしてしまったような、カーニュ・シュル・メール。思わぬミスは、彼の人生につきものだった。数々のレストランをオープンさせ、同数のレストランを閉店してきた。アラン・デュカスやジョエル・ロブションを始めとする、マキシマンの料理に目がない一群のために、毎回一からやり直す。
彼がつくるアンチョビの揚げ物。そのどこに天才的才能が隠れているのかが理解できずに、ここを後にする者も多い。厨房でセカンドシェフを怒鳴りつける、彼の声を聞いたことがあるだろうか。この引火性ガス男の厨房を経験した料理人は、鳥肌をたてながらその体験談を話す。
それは、まるで装飾のようだ。
一週間、マキシマンに怒鳴られ続ける、という体験は、お金を払ってもしてみたいものだ。それには比類がない。
ジャック・マキシマンの料理には、激昂が感じられる。彼が作る本物のニース風サラダ(20ユーロ)は、ギシギシいって、文句もたれて、怒鳴りつけてくる上に、辛い。(アンチョビ、ピーマン、ウイキョウ、玉ねぎ、レモン)しかし、優しくて鮮やかな一面も見せた。(トマト、そら豆、卵黄)
24ユーロのランチメニューは、お得である。
Bistrot de la Marine
96, boulevard de la Plage / Cros de Cagnes
06800 CAGNES SUR MER
Tel : 04 93 26 43 46
www.bistrotdelamarine.com
Photos / François Simon