ブノア。
レストランに入ってすぐ、どことなく違和感を感じた。
問題は、フランスの気難しいパロディーのなかに滑り込むような、的がはずれたこの内装にまずある。
レモンの木が寄生したベルサイユスタイルの玉縁、「ビストロ」の過剰明記、かなり騒々しい雰囲気をもつアンティークショップのようだ。
ここは、数年前にアラン・デュカスによって買収された、味わい深いレストラン「ブノア」からは程遠い。
パリ、オテル・ド・ヴィル近くの「ブノア」は、本物の保守的なパリスタイルのビストロで、バンケット、銅製のオブジェや、モザイクの入った窓ガラスがノスタルジーを呼び起こす。
リヴィエラ、古いクラシカルなフランス、ビストロ料理、インターナショナルなレシピ、日替わり料理と、多国籍なスタイルを使いまくることで、メニューが手渡された途端、このレストランが、主題から完全にずれたレストランになってしまっていることがわかる。
がしかし、料理は、うれしいサプライズだった。
若芽野菜のコンポジションは、適度なバターで絡めてられ、完璧な仕上がりだった。次に続いた帆立貝の一皿も、同様の活気が感じられ、完璧な火加減だった。
そしてなんとデザートまで、そのご機嫌な快活さが続いていた。
厨房を覗くと、シェフ、マッシーモが、以前トスカーナのアンダナで働いていたことから、この歓呼はイタリア製だということがよくわかる。
とにかく、これもすべてが、人物配置にたけ、真剣な料理をだし続ける、デュカスアートの成果といえる。
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