レストランの悪い批評は、誰も興味をもたないばかりか、ご想像の通りだれにとっても楽しい話ではない。
ギィ・サヴォワの場合は、ひどかった。
全体的にみたら悪くはないがよく失望させられる料理を、10年前からゲリラ戦のように出してきた。そんな不従順さのなかにいながら、ズボンの縫い目の上に指先をそろえて、その料理を頂くことに、少しばかり違和感があった。
だから、彼のレストランへもう一度足を運ぶとなったら、指をコンセントにつっこむような挑戦感がある。
極上なソムリエ、エリック・モンシオを頭に、よく気の利いたサービス。
しかし、料理はひっくり返った状態で始まった。
帆立貝(62ユーロ)やレンズ豆とオマールのクリーム(65ユーロ)は、地に足つかずで、素材の良さが生かされておらず、揚げたハーブ(人参の葉っぱとしその葉)の油がげとげとだった。
こんな場合、額には蒼白のギャングに似た冷たい汗がひたる。
まるで、自分がこの場にふさわしい人間ではなく、幸福のプレッシャーに無感動であるのではないか、と思ってしまう。
2人前のマトウ鯛(150ユーロ)がサービスされたとき、ようやく空に小天使が舞い上がるのがみえた。西洋ごぼうとクルミとソースの、絶妙なマリアージュ。
この料理は最高で、サティみたいに盛りつけられ、優しくて人思いだった。
つまり寛大。
ソムリエ陣は、カーボンが真っ赤に燃え上がっている僕らのテーブルに気づいていたらしい。コンドリュー2杯とシャッサーニュ・モンラッシェ1杯と共に、リングの隅でノックアウトしてしまった。
禁煙席のほのかなライト。この男性的でパリらしい雰囲気の中で、天空を見上げて瞬間的な幸福感を味わう。
デザートは、このジャンルの高級レストランにしては珍しく感じが良かった。
プラリネでほんのすこしいたずらされた、マンダリンのポワレ。
無駄な遊びがなく、才能があふれていた。
433ユーロ。重量級の会計。
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