こんなにたくさんの香りを嗅いだのは久しぶりだった。
ご存知かもしれないが、僕は香水に目がない。僕のバスルームをみせたら、ひっくり返ってしまうだろう。それくらい香水の瓶が山をなしている。
小さなワゴンでそれらが送られてくるわけではないが、よくフィガロの香水記事担当の同僚がサンプルを譲ってくれる。
僕を幸福にする香水は、テール・デルメスTerre d'Hermes, セルジュ・リュテン のアンブル・スリュタンAmbre Sultan, ゲルランのアビ・ルージュHabit Rouge, ロベール・ピゲのフラカスFracas, フレデリック・マルのビガラッドBigarrade とオー・ディヴェールEau d’Hiver。
僕の匂いの感性は小さなころから築かれたものだった。
コーヒー工場と大西洋に挟まれて育ったせいで、ヨードの香りとコーヒーを煎った香りが、僕の脳みそに折り目を一つつけた。完全なる横断スパイラルだ。煎った香りとグリルの香りと焼きたてのパンの香りと都会のロックの香りとちょっとやりすぎな精神的縞模様がごったまぜになった感じ。
今回はディオールのフランソワ・ドマシーFrançois Demachy との共演だった。彼はテヘラン通りにある研究所を案内してくれ、唖然とさせられる香りを嗅がせてくれた。
研究所を後にして自転車に乗った僕は、頭の上に星がたくさん飛んでいたに違いない。
Photo/F.Simon
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