日曜日の夜、アメリカ言葉をしゃべるモン・ヴィエイユ・アミにて。フィガロスコープ掲載記事より。
サンルイ島に勇敢なレストランは数少ない。
どっちみち、世界中からオートバス山盛りの旅行客がやってくるというのに、どうして苦労してまで、いいものを出す必要があろう。だからこの界隈に、むちゃくちゃな料理をだす悪ふざけなレストランを開いたら面白いことになる。17ユーロのコースで、洋梨の種のサラダ、舌平目の手羽先料理、てんとう虫のパイ、テーブルの上にひっくりかえったプリン、出された途端に持って行かれる即焼きのステーキ等々。きっとうまくいくに違いない。2010年にはフーディング大賞を獲得するかもしれないし、ミシュランではグルメなテーブルに推奨されるかもしれないし、ジャン・ピエール・ペルノーのニュース番組では3分間くらい紹介してもらえるかもしれない。
まあとりあえずは、数年前の開店時から成功の道を突き進む、アントワンヌ・ウェステルマンの完璧なレストランへ予約をとることにしよう。
客層
この夜はざっとみて、フランス人は一人だけだった。つまり僕。
英語圏の客層は、その多くがアメリカ人だった。彼らといると、原子爆弾の発射命令が今下ったのかと勘違いしてしまう。まるで米ネバダ州の砂漠にひとりぼっちでいるかのように、彼らは鼓膜を爆発させるくらいのボリュームでしゃべり倒す。
よく聞いてみると、なんとも面白い。
「It’s gooooooooooooood」
「スーツケースの中に雨具を忘れてきたわ」
「ホテルの部屋は小さいけど快適よ」
そうは言っても、国外でフランス人同士の会話を耳にしたことがおありだろうか。それはさらに恥ずかしいものである。
「お母さん見た?太っちょの女の人、マイケルジャクソンの服着てたよ」
フランス人であることに一度も羞恥心を感じたことのない人だったら、僕をセーヌ川の奥底へ放り込みたくもなるだろうが、そうなったら僕は喜んで投げ込まれよう。
サービス
きっと、ウェステルマンのアルザス育ちの魂がここでも感じられる。驚異なる親切さには、お手上げだ。パリのレストランは、しつけが悪くて短気で非常識である場合が多く、それこそセーヌ川の奥底へ沈めてしまいたくなる状況によく出くわす。いいおもてなしとサービスがあってこそ、食事はおいしく食べられ、細かいことなら許してしまえるというのに。言ってしまえば、少しの失敗こそ、むしろ僕を我に返らせるいい機会でもあるのだ。
料理
「鴨のロティー、キャラメルゼされたシュークルート添え」を注文した。小ココット鍋に入った鴨は、うまかったが多すぎた。大きなぶつ切りで出てきた場合、必ずしも鴨料理を好きになれない。この一皿は大量なだけに厄介で、重たくさえあった。ちょっと量を考えて、切り分けてあったらいいだけなのに。
デザートには「自己流バシュラン」を頼んだ。「自己流」いう表現のつく料理をよく目にするが、大抵とくにシェフが頭をひねって開発した後跡が見られない料理であることが多い。例えば、どのレストランでも「トマトのミルフィーユ」を頼んだら、薄く切られた4枚のトマトにちいさなビスケットが添えられた一皿になる。しかしここでは違った。僕らが大好きな、本当にうまいデザートが頂ける。いい体つきで、クリーミーでメレンゲの部分もよくて、頼もしくて気前のいいデザート。
行くべき?
もちろん!
高い?
ワイン2杯で40ユーロ前後は納得できる。
Mon Vieil Ami
69, rue Saint Louis en l’Ile - 75004 Paris
T. 01 40 46 01 35
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Photo/F.Simon
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