散策は続く。運良くも、地中海料理のスペシャリスト、アニッサ・ヘルーが僕の道先案内人だった。彼女はアラブ語を話すだけではなく、この街の隅々まで関知していて、よく美食家たちを、この迷路のような町中へ案内している。
道ばたでは、人々が彼女へ挨拶を交わし、ホテル Yasmeen のスイートのドアなんかが開かれていく。このホテルは、すごく陽気で夕食もおいしく、ハマムを改造したスパのようなものまで完備されている。
ヒゲ面で体の大きな男が、僕を捕まえ、本物のアレッポ産石けんを滑らせる。赤ん坊のように洗い上げられた僕は、子牛の薄切り肉みたいにしごかれ、部屋のすみで乾かされた。
ハマムの奥底から上がってきた僕を見て、ホテルのパトロンが「ロマンチックだった?」と尋ねてきた。なんと返したらいいのか、言葉が見つからなかった。
Photo/F.Simon
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