苦い味が口に残るニュースがある。
オマール海老のサラダや、鳩の首筋、プルピエのトリュフ添えの苦さを言っているのではない。ミオネーのメゾン・シャペルが、倒産した。今年の2月頭に再オープンする予定が、こんな事態に陥ったのだ。
正確で先験的な料理を味わうために、客はミヨネーに足を運んだ。1990年、心筋梗塞のため、53歳でこの世を去ったアラン・シャペル Alain Chapel は、その時代のスフィンクスだった。物思いに耽った仏陀のような彼は、いたずらっぽくて、愛想よく、本物の謙虚さで輝いていた。
ずっと続いていてほしかった類いのレストラン。時代は、夢見る者には、冷酷である。1982年からこのメゾンで働くフィリップ・ジュス Philippe Jousse やスザンヌ・シャペル Suzanne Chapel の懸命さとは裏腹に、アランの死後、3つ星を失う。数年後、息子のダヴィッド・シャペル David Chapel がサービスに、ロマン・シャペル Roman Chapel が、フィリップの率いる厨房に入る。スザンヌが手を引いた後も、シャペル兄弟は、必死で父のレストランを守り通していた。
悲観なニュースだが、寒気がしないわけでもない。アラン・シャペルが、その低い声で語るこのフレーズは、この先もずっと料理界に残っていくに違いない。
「アスパラガスは、ゆでただけでうまいのに、どうしてわざわざパイにする必要があるのだろう」
By F.Simon
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