世界各国の町々が、いざ美食の町になろうと、挑戦状を叩き付け続ける。東京、パリ、フィレンツェ、ニューヨーク、ロンドン、そして、壮美で大海の香り漂う、サンセバスチアン。
この、海水浴場で有名なサンセバスチアンを探索するのは、殻の奥で尻込みする、めくら貝を捕まえるくらいデリケートな話だ。
町の名前ですら、間切りされている:カスティーリャ語で、サン・セバスチアン、バスク語で、ドノシタ、フランス語で、サン・セバスチャン。
ウルメア河口では、轟々と大波が押し寄せる一方で、湾曲したコンチャ湾では、センセーショナルな和平のムードが漂う。人が、リオ・デ・ジャネイロと比べるくらい、世界でも屈指の海辺である。ここでは、キリストが、世界を見守る。しかしそのキリストだって、複雑なサンセバスチアンの街を把握するには、時間を要したに違いない。
19世紀末のスペイン国王、アルフォンソ13世がきっかけで、有名になったサンセバスチアン。パリにある、アレクサンドル3世橋からインスピレーションを受けたズリオラの橋、サーファー、モダンな Kursaal、ここへ立ち寄った著名人たち(ココ・シャネル、ベティ・デイビス、エジプトの王ファールーク、ヘミングウェイ)、そして旧市街にあるタパスバー。
この断言しにくい街のセンスが、果たして僕に掴めるだろうか。
サンセバスチアンは、2016年に、ヨーロッパの文化都市へ立候補した。ここの食は本当にすごい。18万5千人しかいないのに、合計15つほどのミシュランスターが輝く。そして、なんといっても、豪快なタパスバー。日が落ちて、そこへ足を運ぶたびに、この町が世界でも屈指の美色都市になったことを思い出させる。
Photos/F.Simon
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