いつか、この類いのレストランがなくなってしまう日が来るのだろう。海面を沈む潜水艦みたいに、深い海の中へと沈没していく。
今夜、僕らは、パリのグラン・ヴニーズに予約を入れた。ジャン=クロード・ブリヤリーと、フォーブール・サントアントワンヌの内装建築、ロメオと、ルイ・ドゥ・フュネス主演の映画「ル・グラン・レストラン」を合わせて割ったような雰囲気のレストラン。嬉しいけれど混ぜこぜな世界。まるでお笑いミュージカル。昔の牢獄みたいに、オーナーが料理名を歌い上げ、使用人は、遠慮なしにどやされる。
「だめだめだめだめだめ」
そんな一方で、客の僕らは満足げに食事を進める。ガストロノミー界には、きっと、セバスティアヌス的な殉教精神が存在するのだろう。ジャガイモを熱心にむいたり、銀食器をしっかり磨いたり、最後の客がアルマニャックをすするのを、じっと眺めたり。汗を流して働くことに、真の喜びを感じる世界。
そんな中で、料理はどうかとくれば、それも開いた口が塞がらない。どこかしこから、ハムやサラミが飛び出してきて、バターやクリームが山盛りになって運ばれてくる。高速通信なるものは、ここで生まれたに違いないが、かといって、それが必ずしも必須なものではないといえる。ラディッシュと一緒に飾られた、馬鹿でかい西洋ピーマンやトマトが一例だ。食欲がびっくりしてしまうその料理は、過大で、会計は、息がつまるくらいにゼロが並んだ。
Le Grand Venise
171, rue de la Convention - 75015 Paris
Tel : 01 45 32 49 71
一人約120ユーロ
Photos/F.Simon
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