「うちは軽食屋じゃなくて、レストランだよ。うちの売り上げはどうしてくれるんだい。」
「ぼくは常連の隣人じゃないか」
「関係ないね。うちにきたら、食べなきゃいけない」
苦笑いのワンシーン。完全にオーナーの標的になったその男は、ぼさぼさの頭でいかにも退職者の顔をしていた。幸運にも、彼はオーナーの傲慢さには動じず、大量にあるその鼻毛さえ、びくとも動かさなかった。このケチなはったり屋の攻撃を、人ごとのように応じていた。
僕の方は、と言ったら、うってつけの生きた「楯」と一緒だった。髪にメッシュが入り、太らないかどうかを気にしだした、思春期前の女の子。オーナーは、ちょっといやそうな様子を見せたが、それでもめげず、
「待ってる間、ハムでも食べる?」
値段は、意外とすぐに一人約50ユーロまであがる。安いとはいえない。極めつけは、クレジットカードが使えないことだった。
L'Auberge Le Quincy
28, avenue Ledru-Rollin
75012 Paris
Tel : 01 46 28 46 76
土日月休
Photos/F.Simon
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