“殺された”鶏は、“死んだ”鶏だと思われがちだが、実はそうではない。
この世に存在した有名人を思い浮かべればわかりやすい。
彼らはただこの世から姿を消しただけだ。
死後少し時間を経たところで、彼らは完全に死亡する。
その間、彼らは死後の世界に佇む。ジャック・マルタンが、その象徴だった。
鶏も、その法律外の延長齢期間をもつ。
読者は家畜肉屋でじっくり選んで鶏肉を購入するだろうか。
家畜肉屋は重要だ。
少し考えてみたらわかるだろう。
スーパーで購入するプルーストやジョイスやカラジャンやペトリュスを想像してみたら、完全に異教徒的でほぼ冒涜的でさえある。
鶏肉だって、立派に購入される権利がある。
セロファンで包まれた死者の画や、おむつみたいなバルケットからは程遠い。
鶏肉は、風通しのいい場所に保存され、室温の香りを保たなければならない。
僕にしてみれば、料理のレシピはここから始まる。
長くて疲れる本の中で、鶏肉は1000通りの焼き方で火を通された。(実際には200通りだが)
公害を思わせる羽がこげる悪臭の中。車のエンジンに乗って(パリーナント間4時間の加熱)。そしてその他もろもろの苦悩。
フィガロスコープの特集を機会に、ベットで一休みしたから練り上げられた。
この鶏は、1時間ほど足を広げて過ごした。
奇妙?
好きなら奇妙さなんて吹っ飛ばされる。
次は、添え物の行列とソースの歓声。
ドライレーズンとブドウの実、蜂蜜ヴィネガーと蜂蜜、バルサミコ酢でつくったソース。
毎回メニューは変わって、コリアンダーの実と加熱の最後に落とし入れるみじん切りにしたコリアンダーの葉で作ったソース、ショウガのパウダーと、すりたてのショウガで作ったソース等々。
ちょっと多めの塩と少し長めの加熱時間(220度で90分)。
ほらね。
消滅したものを夢みてしまう瞬間。
Clairs de Poule
Ed. Agnès Vienot
鶏肉を使った200のレシピ
フランソワ・シモン
料理本屋 La Cocotte (5, rue Paul-Bert – 75011 Paris) にて販売中
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