超高級な店で、庶民の料理を食べること。なんとも、興奮してしまう一時である。
というのも、真剣な表情で、ゲームに乗る気もない連中を観戦できるからだ。挙げ句の果てに、料理を馬鹿にしだすのは、超高級な空間への、反逆精神からくるものだろうか。
この手の宮殿系ホテルのレストランでは、手持ち無沙汰な冷笑的雰囲気を楽しむことを除いては、クラブ・サンドウィッチやコーヒーエクレアやフィナンシエを、お茶の時間に食べなければ、という義務感に取り付かれる。これは、貴族階級によくある傾向かも知れない。つまり、シンプルで素朴なものを馬鹿にしないどころか、その価値を上げようという信念。
ブリストルは、パリの中でも最も富裕層が通う場所で、その馬鹿高い価格には、苦笑いするどころか、大笑いしてしまうくらいである。そこらのブラッスリーで食べるのと同等価格を払って、アボカドのサラダを注文する、という行為は、完全にその人の好みの問題である。
「114」の価格は、下げられたと聞いたが、どこが下がったのかはさっぱりだ。
フィッシュ&チップスは、暴力的で飢えを癒すような類いの料理である。サッカーの試合を見た後に、雨を浴びながら食べるような料理。つまり、防御物みたいなもの。やけどするほど熱くて、気違いみたいなもの。しかし、パリで食べるそれは、ひざまずいていて、臆病者で、ぬるりとしている。
フライドポテトは、この手の高級レストランにありがちなタイプ。鱈は、綺麗に衣がつけてあって、見栄えはいい。マヨネーズとヴィネガーの間のようなものが、石の板にのってでてきた。
きっと、サービスが、宮殿系ホテルなのだ。ブルストルは、それに関しては一級格だ。パトリス・ジャンヌは、パリでも屈指の、つまりは世界でも屈指の、礼儀作法を心得たディレクターである。彼は、仕事に情熱を見せる若者達の指揮もとっていて、その彼らも、感じよくて、礼儀正しく、つねに気のきく顔ぶればかりだ。こればかりは、完璧だった。
LE 114 FAUBOURG, le Bristol
112, rue du Faubourg-Saint-Honoré
75008 Paris
Tel : 01 53 43 44 44
Photos/
F.Simon