フーディーという言葉をご存知だろうか。
食材とレストランに、目がない連中のことを指す。彼らは、チョコレートのエクレアや揚げ菓子のためなら、フランス縦断だって、ひょいひょいとこなしてしまう。
しかしよく考えてみると、昼食にブルターニュ地方のクロワジックで生ガキの一皿を平らげた後、夜にリールでフライドポテトつきのムール貝を頂くことは、決して難しいことではない。
TGVに乗ればいいだけの話。
外国人は割と身軽な傾向があって、特に日本人なんか、陶器のマグカップを買い求めるためには、リモージュにまで足を運ぶ。カヌレが食べたいならサンテミリオン、クグロフならアルザスといった具合だ。何十キロもの道のりをもろともせずに、情熱だけが突き進む、というわけ。
フランスが、まるで小さな国であるかのようにさえ思わせてしまう。
しかし、問題はここにある。
「近所でも、それなりにうまいものが食えるのに、フランスを縦断する必要があるものか?」
「ある」と答えたあなたは、うまいもの好きだろう。そうでなければ、一口目を味わう瞬間を思い出に刻みたいから、わざわざ赴くのかもしれない。
そんなわけで今回は、足を運ぶのに時間がかかっても、納得できる衝撃的な地方のいい店をご紹介。
南仏カルパントラ Carpentras
コンフズリーの「ボノ Bono 」は、火を入れた果物菓子がうまい。
根強い人気の伝統的な地方菓子が有名なこの店は、情熱をもって、果物のコンフィの砂糖包み(100g で 5 ユーロ)もしくは砂糖なし(100g で 4,5 ユーロ)、レモンや黄金のアプリコットのコンフィチュール、かりん等、果物のゼリー(100g で 3 ユーロ)を作り続けている。
Bono
280, allée Jean-Jaurès – 84200 Carpentras
T. 04 90 63 04 99
パティスリー「ジョヴォー Jouvaud」は、メレンゲのお菓子が有名。
ローストしたノワゼットを中に加えた大きなメレンゲのお菓子、ロカイユは評判高い。カフェ、チョコレート、バニラ味。また、チョコレート愛好家クラブ認証の板チョコや、プルーン、メロン、イチジク等、多種そろった果物のコンフィ(1kg で 56 ユーロ)もかなりいける。
Jouvaud
41, rue de l’Évêché– 84200 Carpentras
T. 04 90 63 15 38
リヨン Lyon
ブイエ Bouillet は、マカロン界の王子だ。
日曜のクロワ・ルース通りには、マカリヨン macalyon を求める客が列をなす。この塩味キャラメルのマカロンは、1 箱 4 個入りが 6 ユーロ、1 箱 18 個入りが 26,20 ユーロ。また、18種ある定番のマカロンや、どでかいマカロン(46,80 ユーロ)、チョコレート、キャラメル、華の塩等の小さな粒が口の中ではじけ散る、ダイナマイトな棒飴(17 ユーロ)もお見逃しなく。
Sébastien Bouillet
15, place de la Croix-Rousse - 69004 Lyon
14, rue des Archers – 69002 Lyon
T. 04 78 28 90 89
ミュルハウス Mulhouse
ミシェル・バンワース Michel Bannwarth は、多種多様の冷製菓子で名高い。
とくに、ピスタチオとフランボワーズ、フランボワーズの果汁のマカロンはすごい(4人分で 20 ユーロ)。サントノレ(1人分 5 ユーロ)や基本のクグロフ(6 ユーロ、9 ユーロ、12 ユーロ)、アイスクリームも、彼が作るお菓子の代表格だ。
Bannwarth
50, avenue d’Altkirch – 68100 Mulhouse
T. 03 89 44 27 32
アルボワ Arbois
「イルサンジェ Hiesinger」は、チョコレートを賛美し続ける。
丹誠込めて作られたガナッシュのチョコレートや、チョコレートに対する敬意がはらわれながらもクリエイティブ精神が溢れるケーキが並んだウィンドーは、本当に素晴らしい。苦味のあるガナッシュとアーモンド、甘みをとったムース・オ・ショコラ、ノワゼットとアルボワ産マール酒漬けのブドウは必見。
フランス最高職人賞(MOF)受賞者。
Hirsinger
Place de la Liberté – 39600 Arbois
T. 03 84 66 06 97
マンステール Munster
ジルグは「旅のお菓子」を発明し続けている。
1936 年創業、ヴァージニーとティエリー・ジルグ Virginie & Thierry Gilg が舵を切るこのメゾンは、小さなチョコレート「マンステール」でその名を上げた。ゲベルツトラミネールのマール酒に漬けられたアーモンドは1箱が 22,10 ユーロ。オレンジとアルザスの蜂蜜でつくられたふわふわのパン・デピス(250 gで 8,90 ユーロ)、チョコレートケーキ(250 g カットで 8,90 ユーロ)、 そして、クルミとアーモンドがはいった、名物菓子「旅のお菓子、マルケールのデリス」(小サイズ 11,50 ユーロ)もお忘れなく。
Pâtisserie Gilg
11, Grande-Rue – 68140 Munster
T. 03 89 77 37 56
ボウル Baule
クリストフ・ルーセル Christophe Roussel は、ルリジューズ Religieuses(宗教の意。シューを重ねて飴をかけたお菓子)を讃え続ける。
彼のチョコレート、ボウル地方のおいしい口づけ(12 ユーロ)は、大成功を収めているが、「カトリック的ではないルリジューズ」(いろんな味、多種色、3つの形のシュー生地:3,80 ユーロ)やレストランで頂くデザート風の大きなマカロンの寄せ集め、等々も見逃せない。
Christophe Roussel
6, allée des Camélias - 44500 La Baule Escoublac
T. 02 40 60 65 04
サン・ジョン・デ・リュズ Saint-Jean-de Luz
コンフィズリーの「パリエス Pariès」は、カヌガ Kanougas を作り続けている。
この地方では知らない者がいない、名物店となったこのお菓子屋では、僕らを発狂させて有名なカヌガ(キャラメルとチョコレートの間のお菓子)が、ホイップクリームで仕上げらている。(コーヒー味かバニラ味、100 g で 30 ユーロ) また、小さなマカロン(10 〜 12 個で 9,8 ユーロ)や風味高いガトー・バスクもお忘れなく。
Pariès
9, rue Gambetta - 64500 Saint-Jean-de Luz
T. 05 59 26 01 46
ニーデルモルシュヴィール Niedermorschwihr
「メゾン・フェルベール Maison Ferber」は、コンフィチュールを表舞台に掻き立てた。
ここ、コンフィチュールのメッカでは、250種ものコンフィチュールが、クリスティーヌ・フェルベールによって創作されている。バエルウェルカ Baerwerka という名の素晴らしいチョコレートも隅にはおけない。
田舎の雰囲気を壊さないエピスリー・パティスリーは、内装も落ち着いた感じ。
Maison Ferber
18, rue des Trois-Épis - 68230 Niedermorschwihr
T. 03 89 27 05 69
リール Lille
「ミールト Meert」 は、ゴーフルを支配し続けている。
ヨーロッパで一番古いパティスリーの一件であるこの店は、歴史的モニュメントでもあり、マダガスカル産のバニラで作られたゴーフルが有名だ(一枚 2,20 ユーロ。)ホームメイドのキャラメル味も見逃せない。
Meert
27, rue Esquermoise - 59000 Lille
T. 03 20 57 07 44
Le Guide gourmand (Éditions Glénat)
Élisabeth de Meurville
シャンパーニュ・オ・モンドール Champagne-au-Mont-d’Or
「セーヴ Sève」は、プラリネのタルトを昇華させている。
このリヨンの有名どころは、プラリネのタルトを軸にどんどん成長し続ける。マダガスカル産のバニラ、プロバンス地方のアーモンドを使ってできたこのタルトは、 15 ユーロもしくは 26 ユーロ(6人分)。モン・ドールのピエールは 100g で 20 ユーロ。そして2000 年に生まれた、おつまみ用マカロンは、セップ茸と鴨のフォアグラ、イカ墨と黒オリーブのピュレ等が選べる。(各1,5 ユーロ)
Sève
62, avenue de Lanessan - 69410 Champagne-au-Mont-d’Or
T. 04 78 35 04 21
3月に新オープン Halles de Lyon - 29, quai Saint-Antoine
そしてパリ
もう一回、パリにある有名どころの甘い店を、羅列して称賛し直すのは、時間の無駄といえるだろう。
アンジェリーナ、ラデュレ、フォション、ルノートル、ダロワイヨ、カレット、ピエール・エルメ、ジャン=ポール・エヴァン、そして胡麻のアントルメが有名なアオキ。
皆さんが、もうとっくにご存知な店ばかり。
だから今回はちょっと意向を変え、最近この首都にオープンしたてのパティスリーをご紹介しよう。この職人たちは、大抵、パリの大手ホテルで修行を積んでから、自分の店を開いたケースが多い。
「デガトー・エ・デゥパン Des Gâteaux et du Pain」
プラザ・アテネのシェフパティシエ、クリストフ・ミシャラックのお気に入りだったクレール・ダモン Claire Damon の店が、ピエール・エルメも店を構えるパルトゥール通りにオープンした。偶然、ヤン・プノール Yann Pennors がこの両店をデザインしているが、土地柄もあって、この2店はライバル店となることだろう。まずは、サントノレのカフェ味、カシスと栗のモンブラン、そしてパンを1キロから始めてみよう。かなり危険。
Des Gâteaux et du Pain
63, boulevard Pasteur – 75015 Paris
T. 01 45 38 94 16
もう一人の期待の若い女性シェフは、ローランス・エデゥレー Laurence Edeler。同じくパティシエの父、ラルフ・エデゥレーと共に、17区にあるエキュルイユ通りで、ブティックをオープンさせた。
おすすめは、マロングラッセとウィスキーのルリジューズ。
Pâtisserie L’Ecureuil
96, rue de Lévis – 75017 Paris
T. 01 42 27 28 27
4区のマレ地区では、ピエール・ガニェールのパティシエだった、ナタリー・ロベール Nathalie Robert とディディエ・マルトライ Didier Mathray が、小さなグラスに装飾したデザートで、常連客をうならせている。マンゴーのエクレアも必見。
Pain de Sucre
14, rue de Rambuteau – 75004 Paris
T. 01 45 74 68 92
フィリップ・コンティチーニ Philippe Conticini のブティックオープンが、ついに1年後にせまった。そのブティック開店前に、どんなものがそこで味わえるのか、4区にできたこのシェフのミクロなブティック、エクセプション・グルマンドゥで体験できる。柔らかいヌガーや極悪なクィニーアマン、やめつきになるクッキーがおすすめ。オープンしたて。
Exceptions Gourmandes
4, place du Marché Sainte-Catherine - 75004 Paris
T. 01 42 77 16 50
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