手頃な店を探しに出かけて、ノスタルジーの世界に陥り、胸を痛めてしまうのは目に見えていた。
でももちろん、心地いい思いもたくさん味わったわけだが・・・。
この界隈は、うまくて本物の料理が味わえるレストランが軒を連ねる。ラ・スリジー、スプリングetc…
シェフが厨房にいて、オーナー(もしくはウェイトレス)がホールに立つ。
そして客がその間を占める、という構成。
サンドウィッチみたいな料理は完璧だった。
嬉しげなピンク色をしたハムは、今にも僕らの口の中に飛び込んできたげだった。
厨房のシェフを目にしながら食事するのは、キュイジーヌを2次元の世界で見つめているようなこと。
つまり直球。
ヴォヴァン地区にある、レストラン「ル・タンブル」では、僕らが感動せずにはいられないような振る舞いで、シェフがそこにいる。手首を器用に使ってフライパンをふるい、仕上げにハーブや塩や胡椒をそっとのせ、生まれたての赤ちゃんを扱うように魚を皿の上に滑らせる。
単純にも、食事の大半の時間を、厨房を観察しながらすごしてしまった。
ひょっとしたら、シェフを手助けして、洗い物をはじめる奴も現れるかもしれない。
センチメンタルな料理を求めるなら、試してみるべきだ。
鍋やフライパンの音、真っ白なテーブルクロスやナプキンが、心を落ち着かせてくれるだろう。価格は、質と心遣いを考慮したら、安すぎるほうかも。
Le Timbre
3, rue Sainte-Beuve – 75006 Paris
T. 01 45 49 10 40
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