この日、ここが世界で一番成功していた場所だったに違いない。
見事なくらいひとりぼっちの人、孤独にポーズをとっている人、血迷った観光客、エルメスの鞄を脇にチーズの盛り合わせをつついている小さな婦人・・・。
この日、カフェ・フロールには大して客はいなかった。
20時になって、ふと周りを見渡すと、10人そこらしかいなかったと思う。
本のページをめくる音や、コーヒースプーンがコーヒーカップにこすれる音しかきこえないくらい静かな夜だった。
パリが深呼吸をしている。
僕らはワインを何杯か傾けた。
夜の中に滑りこんで行くためにはちょうどいい量だった。
Photo/F.Simon
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