もし今、レストランの予約にお困りなら、それもそのはず。ファッションウィークの真っ最中だからね。
これがパリ。レストランが、パラドックスに満ちた人種に襲撃される。彼らは要するに、口に押し込まれるものを神聖に拒むといった、モード界の人間達だ。それなのに、テーブルクロスとインゲン豆がのせられた皿へ、前屈みになっている姿を目撃する。
腹が減ってないって?仕方ないから、滋養のあるものを少しだけ皿にのせて、目の前に置いてあげよう。席代と食事代を置いていかなければならないからね。
それでも、モード界の小鳥達は、腹が減っていない、という。
彼らは線の状態で固まり、エスキスのようだ。そう、鉛筆でひいた線。それらの物体は図面で、その口元は聖棺を思わせる。
エッセンスの中、または異次元にいる。脂肪がなく、骨もあるの分からないくらいだ。
彼らの魅力と、死体置き場を思わせる雰囲気と、その奇妙さが漂うレストランを通り抜けながら、彼らこそ、この古くさくて単調な世界を、魅力的で永遠のものにしてくれているのだ、と考える。
今流行りのレストラントップ10
1) ホテル・コストは、その悲観に暮れた死体置き場のような雰囲気と、セクシーな自負心が、ある種の客層に「二度と来るものか」と思わせてしまうだろう。しかし、それ以外の客には、なかなかいいものだ。ボックスオフィスに名前の並ぶ人物や、CAC 40 のビジネスマンや、純真な僕らのファンタジーが肩を並べ、席の取り合い始める。蛇足な食べ物は、インゲン豆と舌平目のムニエール風、クリスピー・ダック等。価格にさえ威圧されなくなる。
Hôtel Costes
239, rue Saint Honoré - 75001 Paris
Tel : 01 42 44 50 25
75 ユーロ
2) ル・フロー(植物相)。文字通り、食べる場所ではない。地下のタイルが一新されてから、かなり良くなった野菜のキッシュや、恐怖のウェルシュ・レアビット(マスタードをぬったトーストの上に溶かしたチーズをのせたもの)等。顔を上げると、モード界の人間と文学界の人間と有名人らが混ざりあう、最高のキャスティングに遭遇できる。
Le Flore
172, bd Saint-Germain - 75006 Paris
Tel : 01 45 48 55 26
25 ユーロ
3) マティス。Beigbeider, Mick Jagger, Edouard Baer, Ardisson 等の有名人の隠れ家は、ジェラール・ナンティの見張り下にある。食べ物は自発的に忘れてしまえるが、かなり社交的。そんなことだから、有名人でない客は、あなただけになる。
Mathis
3, rue de Ponthieu - 75008 Paris
Tel : 01 53 76 01 62
75 ユーロ
4) けんだま遊びは、もうおしまい。コスト世界の出番だ。内装建築家のクリスチャン・リエーグル Christian Liaigre が、この界隈一のホールドアップな場所作りに挑戦した。アルマーニ・カフェの客をさらい上げるんじゃないか、と思わせたが、そうも影響は出ていないらしい。やっぱりいいね。フローの付録的存在でもある。女性助言者、ローラ・スメットの存在は、見られたがりの左岸人間の視線さえ引いた。
スパイスのきいたすずきのタルタル、深海大平目のグリル、タイ風牛肉、巨大なチョコレートのエクレア等。
La Société
4, place Saint-Germain - 75006 Paris
Tel : 01 53 63 60 60
70 ユーロ
5) カスピア。通に言わせると、サービスディレクターのストイックさが、メゾン・ド・キャビアよりいいらしい。この店の最高料理(ハバロフスクのじゃがいもといくらの一皿、30 ユーロ)を前に、屈み姿勢になっても、誰も文句を言ってこない。もしウォッカを一杯だけ味わいたいなら、moscoskai cristal がおすすめ。APC の連中( Touitou, Mondino, Jarvis Cocker, Wes Anderson…) が常連客。
Kaspia
17, place de la Madeleine - 75008 Paris
Tel : 01 42 65 33 32
120 ユーロ
6) フェルディ。店主にはときどきうざいと感じてしまうが、モッヒートはかなりうまく、食べ物もよくインスピレーションを受けていて、最高にうまいものが頂けるときもある。肘や膝が隣人とよくぶつかるのがいい感じ。近所の住人はみんなここに集合。Agnès Comar, Frédéric Malle, Vincent Darré, Elie Top 等。
Fendi
32, rue du Mont Thabor – 75001 Paris
Tel : 01 42 60 82 52
40 ユーロ
7) カイ。モード界の人間は、 隔世遺伝的に Mont Thabor 通りの「衣川」へ足繁く通うが、料理の質は完全に落ちた。もし、外せない状況で、抜け目のない店をお求めなら、この店の弁当、天ぷら、インスピレーションを受けた麺類に挑戦してみるべきだ。見事にミネラル。
Kai
18, rue du Louvre - 75001 Paris
Tel : 01 40 15 01 99
45 ユーロ
8) ダヴ。流行の域からはずれたこのアジアンな店を、機会があるたびに思い出す。ジャン=ジャック・シュル Jean-Jacques Schuhl の最新小説「Entrée des Fantômes」(ガリマール出版)のワンシーンにもでてくるが、狂った遺伝病みたいに、また舞い戻ってくる。輝かしい店主のダヴは、このセンチメンタルな愚弄を笑い飛ばすが、また10年は残り続けることだろう。
Dave
12, rue de Richelieu - 75001 Paris
Tel : 01 42 61 49 48
60 ユーロ
9) アナイ。肉料理に、南アメリカのインスピレーションを受けたこの店の料理を、誰もが不満をもつようだが、それがどうした?だから来るんじゃないか。たしかに、has been な部分はたくさん見られるが、少しの微光は優しさに溢れている。
Anahi
49, rue Volta - 75003 Paris
Tel : 01 48 87 88 24
50 ユーロ
10) ラ・フィデリテ。アフターに欠かせないモンタナの、アンドレの連れ、Olivier Zahm, Natacha Ramsey, Camille Bidault, Waddington, Yaz Bukey らと一緒に。
La Fidélité
12 rue de la Fidélité - 75010 Paris
Tel : 01 47 70 19 34
おまけ) ホテル・ムーリスのブラッスリー・ラウンジ、前 aequo で、現ル・ダリは、期待したものが食べれ、見たことのある顔ぶれが溢れる。気違いな会計。
Le Dali
228, rue de Rivoli - 75001 Paris
Tel : 01 44 58 10 44
By F.Simon