いい老舗レストランは、日曜の夜が最高だ。
頭の中で、週末が終わっていく切なさを感じ始めている僕らに、月曜に立ち向かう勇気をくれるし、余裕があって、密入国者にでもなった気にさせてくれる。
昔から、ブノワは、間違いないレストランの一つで、そのウェイターの口ひげやテリーヌが、上級クラスの証拠とも言われていた。アラン・デュカスグループになっても、その評価は、不動だった。「高価で、料理も悪くない、たまにはすごくうまいものの食べれる。」
しかし今日、厨房からシェフの怒鳴り声が客席まで聞こえてくる反面、100年以上の歴史のはずれにきて、「たまにはすごくうまいものも食べれる」ことはなくなった。
店内は、日曜の夜だから想像はつく。半分以上が空席で、それがいい雰囲気を作り上げていた。僕らが案内された席は、ちょっと隠れ家的な、角のテーブル席で、それが最高だった。それなのに、ウェイターのサディズムか、店内に10数席も空席があるというのに、静かな一人客がぼくらのテーブルの真横に案内されてきた。なんとフランス的!
料理の品数はそんなに多くはないが、豪華。フォアグラやトリュフ、そしてソースがよく使われている料理が並ぶ。マカロニのグラタンと一緒にサービスされた牛のフィレ肉は、気品がありながらもぼてっとしていたが、納得できる一品だった。味はいいがちょっと疲れ気味のパリブレスト同様、よくできているが、思い出に残る料理ではない。
客層ばかりは、レストランの方針に沿っていないように思えた。数人の客は、ちゃんとした装いだったが、その他は、スリッパ姿の隣人や、高級ホテルから送られてきた観光客といった顔ぶれ。そんな客層でムードは作れない。
2人で、簡単な食事と高くないワインを注文して、165ユーロは強烈だろう。
とくにおすすめはしない。
Benoît
20, rue Saint Martin - 75004 Paris
Tel : 01 42 72 25 76.
無休
Photo / F.Simon
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