アン=ソフィー・ピックが、パリにレストランをオープンした。遊び心にあふれた個性的なレストラン。開店前、2件目を出す決意はいかなるものかと、彼女に聞いてみた。
フィガロ
何が目的でパリに?
アン=ソフィー・ピック
楽しみたい気持ちから。もちろん、仕事は一生懸命果たしますが、ヴァランスにある、私のレストランへも来てみたい、とお客さんに思わせたいですね。地方で働いている料理人は、自分の実力を見てもらう機会が必要なのです。挑戦好きな私の、またひとつの賭けです。
フィガロ
パリは、リスクが高い?
アン=ソフィー・ピック
パリでは、遊び心をもって料理をしたいと思っています。感覚を刺激するような料理で、お客様に、私の料理を吸い込んでもらいたい。今回、東京に本社のあるフレグランスの「高砂」と、コラボレーションを組んでいます。そこで、いろんな香りを含んだムーイエット(細長く切ったパン)からスタートするメニューを構成しています。その香りとは、例えばりゅうぜん香風のバニラ、海の香り、花、そしてスパイスの利いた落ち葉の香り。香りを使って、メニューのエスプリを作り出すことが目的です。
フィガロ
より一般客に近づくために、ビストロを作る?
アン=ソフィー・ピック
ここは、ビストロではありません。ガストロノミーと、ビストロの間と言ったところでしょうか。シックで、コンテンポラリーで、透明感を操った空間です。道からも、厨房が見えるんですよ。
フィガロ
自分の個性を識別できる?
アン=ソフィー・ピック
できるはずです。時間が経つにつれ、自分の個性は着々と築き上げられてきていると感じますし、料理も、どんどんわかりやすくなってきています。特に、風味と食感に関しては、皿の上ではっきり認識できなければいけない。女性的かつ、感情的な料理を作りたいと思っています。ショーオフ精神は無しにね。
フィガロ
パリ店オープン後も、本拠地はヴァランスで、パリへ来るのはごく稀。厨房にシェフがいないことに、客はいい気がしないかも?
アン=ソフィー・ピック
お客様は、シェフが多数の店を同時に持っていることを知っています。この問題に関しては、ローザンヌのボーリバージュでの出店の話を頂いたときに、さんざん考えました。こんなに素晴らしい経験ができる機会は他にない、ということだけが明らかでした。結果、ミシュランで、二つ星を獲得しただけではなく、料理人たちの味覚に影響を与えることを覚え、さらに、プレッシャーの中でも彼らを成熟させ、私を常に身近に感じさせるようにするコツを習得しました。
フィガロ
ヴァランス以外に店をオープンするにあたって、自分の中で発見した事は?
アン=ソフィー・ピック
確かに、ヴァランスでは、遺産という重みが常につきまとっています。父も、祖父も、厨房から離れた試しがありませんでした。それがドグマだったんでしょうね。彼らとは別の道を進むと言う事で、心引き裂かれる思いもしました。家族が築いたエスプリを壊してしまうのではないか。しかし、結果は、よりリラックスして、寛容な私がいました。どこか、解放されたような。とは言いつつも、かなり悩みましたよ。
La Dame de Pic
20, rue du Louvre - 75001 Paris
Tel : 01 42 60 40 40
22時30分まで
日休
メニュー 49ユーロ、79ユーロ、100ユーロ、120ユーロ
Photo/F.Simon
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