１週間、ニューヨークをあさりながら、いい店を発掘してきた。疲れきってしまったが、なんと刺激ある体験。睡眠を促すような心地いい暑さの中、今話題のレストラン「レストラン、サファリ」へ、ティム＆ニナ・ガザットに同伴。一夜で１０件ほどのレストランを回った。数年前は、４０件ものレストランを回ったものだが。そして最後に行き着いたのが、「ミネッタ・タバーン Minetta Tavern」。これらの店は全部、９月半ばにご紹介予定。僕がコラムをもつ、ディレクトユイット Direct 8が、ニューヨークみたいな町のレポートを、と２６分のビデオを撮影するよう、注文が入っていた。そんなことで、一週間、走り回ったてたわけ。
帰国後は、確かに疲弊していたが、爽快感があった。
Photos / F.Simon
ここはニューヨークで一番予約の取れないレストランの一つだ。その名もコルトン。
そのわけはすぐに理解できる。
攻撃的な部分が全くなく、効率的な透明感のようなものが感じられる繊細な料理。
野菜のサラダ、オマールのバリエーション、デザートはライチと蜂蜜とアールグレイが飾られてバラバラになったバシュラン。
いいなりの客層は、フランスの口うるさい一団を忘れさせてくれ、サービスは心配性の碁盤模様だった。たしかに、小枝にしっかり捕まっている人間ばかりだったからね。
Corton
239 west Broadway
T. 212 219 2777
www.cortonnyc.com
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Photo/F.Simon
Katz’sを後に僕らが向かった先は、ダニエル・ブリューのレストラン「DBGB」。
効率よくて、悪くはない。
ただ、このタイプのマーケティング効果が強いレストランに、僕がほとんど惹かれないのは笑える。気違い親父の古い思考だと思われるだろう。
その後にも、ジェフレイはいいスモークフィッシュが購入できる店に僕を連れて行った。
新漁のオランダ産ニシン！
店内は、品物がぎっしり詰まっていい雰囲気。このジャンルの食品に目がない人をうっとりさせる。
幸運にも、ジェフレイの知り合いの店員は休暇中で、試食から免れた。
この次にすごいレストランが僕らを待っていたからね。その名も「Dim Sems」。
Russan & Daughters, appetizing since 1914,
179, East Houston street
T. 212 475 4880
www.russsanddaughters.com
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Photos/F.Simon
親友のジェフレイ・ステンガーテンとの待ち合わせは、イーストホーステンストリートにある Ketz’s の前だった。ちょうどランチの時間で雨が降っていたから、中で待っていようとドアを押した。
・・・唖然。
ストライキ時のメトロの中にいる状況のごとく、集団が、塊が、寄せ集めが１００人くらいいたんじゃないかと思う。
ジェフレイ・ステンガーテンが、どうしてこんな所に僕を連れてきたかったのか、正直理解しかねた。しかし行列に並んでいる時、ようやく謎が解けてきた。本物のアメリカとの接触。
すずめサイズの食欲を持った僕の前に、いのししの群とカロリーの滝が立ちはだかった。ジェフレイは僕のズボンが入らなくなることをたくらんでいたらしい。うまくのるところだった。
巨大なピクルスが入ったパストラミのサンドイッチを、両手でつかんで頬張る。
僕が土下座で降参したものだから、ジェフレイは次にセロリジュースをすすめてきた。もう限界。
しかし、どうせ来たんだから、マシュマロのステーキやチョコレートの仔羊肉、鱒のコンクリートブロックなんてものありじゃない？なんてね。
サンドウィッチにかぶりつきながら、僕はジェフレイに尋ねた。
「どうしてこの店は、ここ一店舗しかないと思う？」
口一杯にサンドイッチを頬張りながら、彼の答えは「たぶん正直じゃからじゃない？」
ジェフレイの冗談は気持ちいい。
壁に「send a salami to your boy in the army」との落がきが目についた。
205 East Houston street
T. 212 254 2246
Map
www.katzdeli.com
Photo/F.Simon
フォーシーズンズ・ホテルに入っているアトリエ・ド・ジョエル・ロブションでのディナーは、今後、都市における食体験の類いに属するだろう。
頑固者のために用意されたテーブル席がいくつかあるが、日本式のカウンターでジョエル・ロブションの新世代料理を口にする。
時間も分刻みで支配したいのと同様、料理にもはっきりとした句読点が感じられて、時計の針みたいに規則正しい形式主義的料理から、純化されて綺麗で、まるで昇華された食材を使っているかのような料理までもが味わえる。
１２０ドルは安くはないが、記念に残る料理といえるだろう。
完全に征服されてしまっているバーはおいしそうないい雰囲気が漂っていた。
l'Atelier de Joel Robuchon
Hôtel Four Seasons
57E. 57th st.
T. 212 350 6658
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Photo/F.Simon
今でもまだ腹の虫が治まらない。パスポートの馬鹿げた手続きのせいで６時間もパリ支庁で過ごすはめになり、前日に飛行機を乗り過ごしたからだ。
到着の矢先、デパーチャーズ誌の編集者ステファンが、モモフク・サムスバーで僕を待っていた。僕のスタートダッシュの手助けをしてくれたわけだ。彼にお願いしていたことは、「新しい美食経験」。
そして向かった先が２１世紀のアジア世界だった。ベーコンと芽野菜のサラダ、豚の小さなバムス等々。
午後２時の店内は静かだったが、夜は一転するらしい。とくに、横にあるバティスリーは見逃してはならない。モモフクの研究所、といったところだが、ひっくり返ってしまうくらいうまいクッキー、特にじゃがいもとコーヒーとビタースコッチのクッキーは最高だった。
ニューヨーク到着以来、第一の衝撃。
Momofuku Ssams Bar
207 2nd Ave, New York,
NY
T. 212 254 3500
www.momofuku.com
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Photos/F.Simon
親愛なる友人達へ
明日の朝からデギュステーションの再開だ。ここニューヨークで今回は１０件ほどの高級レストランを回る。コートン、モモフク、オーメン、チャイナタウン、キャッツ等々最善を尽くすつもりだ。
シートベルトにしっかり捕まって、ドアの鍵をしっかり外しておこう。
Photo/F.Simon
フォーシーズンズホテルの５９階から
