レストラン界に大波がたった今年の新学期は、なんとも喜ばしい。昨年が静かだったせいもあり、今年はどうも、明確な傾向を持ったスジングが効いている。つまり、あまり深く考えすぎないこと。
どうやら、料理人たちも、よりシンプルでミネラルで、食材そのものの風味が生きた料理を選択し始めたようだ。運のいいことに、僕らもそちらの方が好みである。
大厩舎では、著名シェフが、相互交換できないような、他とは違う料理を創作できることを祈りながら、高級レストランから次の高級レストランへと移動した。僕らの大好きなシェフ、ジャック・マキシマンと一緒に、ここで、新学期のフランス料理界動向をまとめてみよう。
パリ
モレがラセールへ
パリの著名高級レストラン「ラセール Lasserre」。ジャン=ルイ・ノミコ Jean-Louis Nomicos が去った後、又一人、仕事を知り尽くしたシェフが跡を継いだ。彼の名は、クリストフ・モレ Christophe Moret。アラン・デュカスの指導下、プラザ・アテネの厨房で、10年以上指揮をとり、そこで3つ星も獲得してたシェフだ。恐れを知らない男と言えるだろう。
17, avenue Franklin-Roosevelt - 75008 Paris
Tél. : 01 43 59 53 43
1人約150ユーロ
プラザ
要注意!ゴシック調の到来だ!アラン・デュカス家では、人事異動の大波が絶えない。クリストフ・サンターニュ Christophe Saintagne が、クリストフ・モレを後継するようだ。今後、プラザでは、ねじ巻き時計みたいに巻き上げられたデュカスを目にするに違いない。真っ白にして、すべてをごちゃごちゃに混ぜ、彼曰く「ゴシック調」へと方向転換。気をつけて料理を頼んでも1人300ユーロを超えてしまう価格以外、綺麗さっぱり変わってしまう、ということだ。
9月30日再オープン。
Plaza Athénée
25, avenue Montaigne - 75008 Paris
Tél. : 01 53 67 66 65
バニラ風味のローランジェー
パリでレストランをオープンさせるのか、させないのか。今のところ、オリヴィエ・ローランジェー Olivier Roellinger はその決心がついていないようである。ただ一つ確かなことは、パリのヴォヤジャー・デュ・モンド Voyageurs du Monde の建物内に、特許も得た「カーヴ・ア・ヴァニーユ Cave à vanille」を作ること。15種類以上のバニラが楽しめるらしい。
11月半ばオープン予定。
55, rue Sainte-Anne - 75002 Paris
ジャン=フランソワ・ピエージュが上階へ突入。
このレストランはきっと、今年の新学期最新情報の中でも、最も話題を呼ぶニュースになるだろう。うまくクリヨン Crillon を去った後、ティエリー・コスト Thierry Costes と共に、ブラッスリー・トゥミューをオープンさせたジャン=フランソワ・ピエージュ Jean-François Piège は、その2階に位置する予定のレストラン内装の仕上げに取りかかっている。毎晩、一定の食材が「今日のおすすめ」として取り上げられ、19席のみの、誰かのアパートにおよばれしたような内装の中で、口にする料理は、一人単価約70ユーロ。9月末に開館!
Brasserie Thoumieux
79, rue Saint-Dominique - 75007 Paris
Tél. : 01 47 05 49 75
カンヌ ガキの頃の夢
このリヴィエラ地方には、大して語ることがないにしても、ジャック・ガンティエ Jacques Gantier が本人同名のガイドブックで公開した、この店は隅に置けない。マルティネーズのセカンドシェフだった、リュドヴィック・オルダス Ludovic Ordas が、彼女のレティシアと共に経営する、28席だけの小さなレストラン。フレッシュでシンプルな地中海料理が頂ける。黒板メニューのランチは20ユーロから。夜は30〜40ユーロ。
11, rue Louis-Blanc - 06400 Cannes
Tél. : 04 93 39 68 08
カーニュ・シュル・メール
マキシマンの再来!
数々の辛酸を味わった後、パリのレストラン Rech (今も毎週監督に訪れている)に一時滞在していた、ジャック・マキシマンは、カーニュ・シュル・メールで見つけた、1863年ものの漁師小屋を改造して、ビストロを開く予定である。その名も、「漁師ジャック・マキシマンのビストロ Bistrot de la Marine-Jacques Maximin」。僕らの親方は、その神話的技術をもって、海の幸を中心とした料理を披露する予定だ。10月にはオープン予定。
96, promenade de la plage - 06800 Cagnes-sur-Mer
Tél. : 04 93 26 43 46
1人約40ユーロ
ユゼス
ラルテミーズ L'Artémise にギヨーム・フーコー Guillaume Foucalt が新任。
ナント
バロン・ルフェーヴルが地方へ。
メゾン・バロン・ルフェーヴル Maison Baron Lefèvre の、ジャン=シャルル・バロン Jean-Charles Baron とイザベル・ルフェーヴル Isabelle Lefèvre は、美食レストランの誘惑に負けるよりも、サン・エルブラン Saint-Herblain に埋まった土地を分割する道を選んだようだ。1780年代の農舎つきである。
スープ、オムレツ、家畜料理、サン=リュース Saint-Luce に3600m2もある畑でとれた野菜がベースの田舎料理。巨大な屋敷内には、食堂がいくつもあり、パン焼き専用のかまどまである。プログラムは、15ユーロから20ユーロと庶民的価格。11月半ばにはオープン予定。
Les Pellières
près du Zenith- Atlantis - 44800 Saint-Herblain
トゥールーズ
この新学期に話題の有望若手シェフでも、一目置けるのは、デュカス厩舎の若手、ピエール・ランビノン Pierre Lambinon (23歳)だ。トゥールーズの美食界へ、晴れやかに姿を現した。マルセイユのバセダ、ローフィアック・トロサンの「Ô Saveurs」を経験後、「カジュアルで気兼ねしない、偉大なる料理」と題して、既に業界へショックを与えている。
19, rue du Paradoux - 31000 Toulouse
Tél. : 05 61 25 51 52
www.py-r.com
コース19ユーロから
サン・ホアキム
「ラ・マール・オー・ズワゾー」第二弾。
ケチで頑固なこの地方で一旗揚げるためには、相当の忍耐力を要したに違いない。エリック・ゲラン(40歳)の難関にも、終わりが見えてきた。建物は改築され、厨房のメンバーも一新し、料理も活気があってパンチの効いた仕上がり。それに、スイートが5部屋と、100メートル先にはリラックススペースができた。劇的である。
La Mare aux Oiseaux
162, île de Fedrun - 44720 Saint-Joachim
Tél. : 02 40 88 53 01
www.mareauxoiseaux.fr
無休 レストランは月曜昼休み
コース40ユーロ〜
一泊145ユーロ〜
Photo/F.Simon