僕らがウェイターに待ち望んでいることは何だろう。
注文をとってそれを運んできてくれること。そしてマーケティングで考案された物体みたいに僕らを扱わないことだ。
パリのホテル・リッツバーにいる、コラン・フレッド Colin Fred 。
彼はすべてを理解している。
10秒ごとに客へ愛想を振るまい、客が席に着くと同時にピーナツを運んできて、注文を取った3分後にはそれを運び、勘定を頼んだら2分後にはテーブルまでレシートを運んでくる、といったサービスの十戒律主義から、彼は程遠い。
彼はそれぞれの客に適応し、直感に任せて体を動かす。具体的に言うと、客を一人一人個人的に扱う。彼はたしかに、付けているネクタイとぴったりの色をしたカクテルだって作れてしまうが、ヘミングウェイが好んで飲んだ、キンキンに冷えた白ワインだってだしてくれる。
試しに、そこいらのソムリエにこれを注文してみるといい。あまりに冷たいそれは規律はずれで、ガストロノミー界の警官を呼びながら、出口を指差さされることだろう。
17時だった。
この日は、かなり重たいディナーが僕を待っていて、それに立ち向かうためにはノンアルコールカクテルが必要だった。
そこで、僕らの味方はちょっと考えたあと、裏方に入って、マイナス18度という氷をとりだし、タバスコをほとばしった後、トニックウォーターとグレープフルーツを加えて僕のために特別なカクテルを仕上げた。
ピフパフブゥーム。
0 ,5秒で飲み干してしまった。
Le bar Hemingway
Hotel Ritz, 15, place Vendôme - 75001 Paris
T. 01 43 16 30 80
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Photo/F.Simon
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