ユーゴ・デノワイエと、初めて出会ったときのことは、今でもよく憶えている。
もう数年も前の話になるが、僕が信頼をおくブルーノ・ヴェルジュが、どうしても僕に会わせたい人物がいる、と話してきた。
紙面で描写する人物と親しくなるのは、好きな方ではない。そうしないことが、僕の方針でもある。しかし、ありがちなことに、僕は「違法」も大好きなタイプである。アラン・デュカス、ピエール・ガニェール、レデン・ロック等の人物と共著したことは、全く後悔していない。毎回、すごい経験を味わっている。そしてまた、当人の本を著作したからといって、アラン・デュカスが経営するレストランについての評論が、左右されたわけではない。アースリン出版との契約確立の時期をみて、実際、僕はそれを実行した。翌日から約12ヶ月間に渡って、彼との関係はかなりぎくしゃくしてしまったけれど、それは仕方のないことだった。
その日のディナーの誘いを、僕は受けることにした。しかし、直前になって、自転車で転倒したからディナーには来れないと、ブルーノから連絡が入った。レストランにキャンセルを入れるには遅すぎた。そんなわけで、僕らは7区にあるビストロで、一対一のディナーをとるハメになった。僕は、病的なほど恥ずかしがり屋な質で、解凍されるまでに、数杯のシラーを飲み上げなければならなかった。しかし相手は、なんと過激に親しみやすいタイプで、僕は徐々に本来のバッドボーイへと変身していった。ユーゴは、その鍛えられた性格、謙遜な態度、彼らしいエネルギーといった、特有の気質をもった人物だった。
その後も何度となく再会しては、あれこれつまみながら、数本のワインを開けた。そのうち、僕らの関係も「友人」と呼べるほどになった。だから、彼が本を書いてくれないか、と頼んできた時も、僕はすんなり引き受けてしまった。
きっと、多くの非難をかうことだろうが、そんなことは内心気にしていない。何せ僕は、矛盾が好きなタイプである。矛盾は前進を妨げるだろうか、とさえ疑いたくなるくらいに。
是非この本を試して頂きたい。一度開いたら、放っては置けなくなるだろう。
Photo/F.Simon