レストラン予約サイトが、多種の割引チケットを提供し、割引価格で食事ができるようになった。そこで、僕が試した先が、「ルテシア」。
ワンクリックで、何でもできてしまうこの時代だ。食事も、割引価格で食べれる。そんなわけで、僕はパリ左岸のブラッスリー「ルテシア」に予約を入れた。ソニア・リキエルがデザインしたアールデコな内装と、はっきりしない料理で有名な、ホテル兼レストランだ。
予約は、思ったより簡単にできた。2-3回操作するだけで、割引券が表示される。
40パーセント割引には、いくつかの条件がついた。まず、料理はアラカルトで頼むこと。そして、飲み物は割引の対象にならないこと。最後に、19時から20時までの間に到着すること。
従業員出入り口から入らなくてもいいし、立ち食いでないとわかって、ひとまずほっとした。
店へ到着すると、僕は予約を告げた。予約帳に並んだ僕の名前は、割引券を持つ客として、オレンジ色のマーカーで印がつけられていた。ウェイトレスの応対に、差別心は感じられない。こういう場合、一番居心地が悪いのは、きっと割引券を持参した、僕ら側に違いない。割引に対する僕らの嫌悪感。
バーゲンでものを買うのは、いったい下品なことなのか?商売的シニズムは、快楽か?正規価格は、罠なのか?
案内された先は、メインルームのバンケットだった。しかし、例の交差点が一望できる窓際の席ではなく、ほのかな光がアーティーな、奥の席だった。きっと、エコノミー客が、ビジネスへアップグレードしてもらったからだろう。
メニューを渡され、ウェイトレスが、割引の条件を再度説明する。こんな場合、プロポーズの場や、誰かをくどくような状況でないほうがいい。僕らは、バーゲンのワゴン車の中に入っているのだから。
料理の価格は、すぐに上がる。北海産すずきのフィレ、ローズマリーの香り、オーガニックのキノアとライム、ソラ豆とトマトのコンフィの一皿が、27ユーロ。副菜は、ほとんど冷めていたが、それもそのはず。この副菜だけで構成された前菜が、本日の前菜だったのを、僕は見ていた。魚自体からも、何も伝わってこない。この料理は、ルームサービスで食べるような普通の料理で、「ブラッスリー」と名乗れるような厨房から運ばれてくるものではない。
デザートの巨大エクレアも、価格に反映して、25ユーロ。
最終的に、125ユーロの食事代から、42ユーロを節約することができた。節約することはいいことだが、もっといいものが食べれたら、さらにいい。
Lutetia
45, boulevard Raspail
750O6 Paris
Tel : 01 49 54 46 46
無休
Photos / F.Simon