フィガロ社の廊下や、正面入り口で、よく声をかけられる。そのたびに、不思議な動揺が隠せない。今回こそ、昇進の話か、それとも最高の旅行プランの誘いか、人生を変えてしまうようなアヴァンチュールか、それとも単に、自転車のタイヤ交換をかってでてくれるか。しかしそれは、ベルニックに代表されるように、いい店を僕に尋ねてくる類いのものが大半だ。
彼女は、すれ違うたびに、僕のほうへやってきて、例えばこんな質問を投げかけてくる。
「いい肉屋さんか、いいたまごが買える店か、いいバッタが買える店か、30人くらいで結婚式が挙げられるところ知らない?でも予算は一人20ユーロ以下ね」
これだけで、ガイドブックができるくらいだ。
僕の「不良仲間」はというと、漂白剤にかけたみたいな、すごい質問をしてきた。
「君がいつも連れて行ってくれる「かわいい」ビストロには、もう飽きたんだな。今度こそ、真剣にうまいものが食べられる店に、連れて行ってくれよ。」
たちが悪く、大胆で不誠実な質問だ。パリのビストロでは、ちゃんとうまいものにありつける。そんな、人生の楽しみ方を知らないかわいそうな男たち。でも、実際、これが今の社会の現状ではないだろうか。
不平等で、無気力で、移り気。
しかし、よく考えてみると、彼らの質問は、そうも馬鹿げていない。この男たちは、何を望んでいるのだ?間違いのない店、ここしかない店、本物が食べられる店?容易な話ではない。
「ラシエット」は、周りにざっと統計をとってみたところ、信用できる店の一つらしい。アラン・デュカスグループで、修行した本物のシェフ、ダヴィッド・ラトゥジェベール David Rathgeber が、度胸と敬意を持って、かの有名な、ルルー・ルソーシェフの後を継いだ。そして今日、彼の料理は、高評価されて、客を真正面から感動させている。僕の雛鳥たちも、始めから納得した、とみえた。
シャルキュトリーから始まって、グラトン(リエットの一種), テリーヌ、あわててサービスされた大きな土鍋のなかには、小イカのポワレが、どさっとでてきた。
デザートも、同様。リオレ、グランマルニエのスフレ、そして、クリーム。
これには、悪党どもも参っただろう、と思いきや、店を出てすぐにでた言葉が、
「次はどこに連れていってくれるんだ?」
サービス
見事。男性的で穏和。
行くべき?
Oui
価格
地元のブルジョワ的価格。料理の質をみたら、当然だろう。
L'Assiette
181, rue du Château
75014 Paris
Tel : 01 43 22 64 86
メトロ Alésia 又は Mouton-Duvernet.
月火休み
Photos / F.Simon
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