シックな人間でも、腹がへることはあるのだろうか。この疑問には、なんの皮肉も入っていない。
周りが騒がしいときには、レストランへ赴くのもいい。あらゆる場所で、人々はフォークを握り、カロリーがぐんぐんと飛び交う中で、あなたは、薪状に束ねられたインゲン豆を食する。爽快で、体中が喜びで満ちる瞬間。軽快さ、優雅さ。そして元気な午後を過ごすのは、まさにあなただ。そんな体験ができるレストランがある。センスのいい料理と、きれいなウェイトレスと、しっかり調整された椅子。
ギイ・マルタンの新しいレストランを、そんなレストランのカテゴリーに仲間入りさせることは、皮肉なことではない。彼のセカンドレストラン「センシング」だったところを改装し、できる限りの客を呼び寄せようと、イタリアブームにのった。料理のエスペラント。気前よくて、母性的で、共謀感があり、太陽光を感じさせる、この料理は、わかりやすい。パリには、高価で、スノッブ的ムードが漂い、食べながら後悔もしてしまうが、皿にのっているものは、実にうまいレストランが存在する。
ギイ・マルタンは、そんな分野のレストランがもつ性質に加え、もっと内密な表現法を好んだ。ばかみたいに小さな量。牛肉のカルパッチョは、柔らかくて最高だったが、5口食べたら、皿の上には何も残っていなかった。クルーゼ皿にのったボンゴレスパゲティーは、円形に小さくもられ、食べ終わっても、何も食べなかったような気分。夢のなかにいたような、網をすり抜けたような。25ユーロのミラノ風カツレツは、がんばってはいるけれど、たいしたことはない。こんな料理を前に、そして、温度が高すぎる赤ワインを手に、イタリア人の彼女が発したコメントは、
「きっと、ここシェフのママは、息子に肉を柔らかくする方法を教えてあげなかったのね。」
ギイ・マルタンは、信頼できるイタリア人を連れてきて、どうすればうまくいくのかと、尋ねてみる必要がある。まずは、もう少し量を増やすことから。だって、料理はうまいんだから。
Guy Martin Italia19, rue de Bréa - 75006 Paris
Tel : 01 43 27 08 80
メトロ Vavin
無休
一人50〜80ユーロ
Photos/
F.Simon