一般公開に先駆けて、今夜ここで結果発表。
ル・フィガロ紙と協賛して、イギリスの雑誌「レストラン」が、651人の審査員によって決定された、世界のうまいレストランランキングを発表。二年続けて、スペインはエルブリのフェラン・アドリアが、その王座を獲得した。
ここで一言。
世界は不動か?
「レストラン」誌が開催したレストランのランキング結果をみて、そう思ってしまってもおかしくはない。去年から、なんにも変化がないのだから。
エルブリは、Fat Duck の前をいき、ピエール・ガニェール、トーマス・キラー(French Laudry、カルフォルニア)、そしてシドニーの Tetsuya’sと続く・・・。
今年度の審査では、2つの地域が新たにその対象へと加えられ、審査員の半分が入れ替えられたというのに、このあり様。レストランのランキングとガイドブックは、流行に反応するのが遅いという、決定的な証拠だろう。
もちろん、リーダーの三件は、食通なら避けては通れないレストランで、この上位三位の名誉は、誰もが納得できる。フェラン・アドアとブルーモンタルとガニェールは、3人そろって近未来料理の職人だ。コンテンポラリーで、発明的で、彼らは料理界に新しいの風を吹かせている。
世界は動いている。
この審査の対象となるには、世界中でよりうまい料理を作ると思われているシェフが集まるグループに属さなければならない。そのグループに、世界各国のシェフが加わることができるまで、もう少し時間がかかるだろう。
世界中、どこを食べ歩いても、うまい料理に出会え、ときには感動してしまうほどの一品を頂くこともある。小さな廊下沿いの席でも、カウンターの端っこの席でも、うまいものはうまい。大阪のナカムラ、ナントの La Maison Baron Lefevre がいい例だ。
どこでも、地球は動いている。
イスタンブールのレストラン「Mikla」は、そのグループに仲間入りしても全く不思議ではないし、上海では、「 Jade on 36th」のシェフ、ポール・ペイレが、右に出るものがいないほどの厳格な料理を出している。
問題は、審査員がその場につくまでに時間がかかりすぎ、その審査員構成にも欠陥がみられる、という点にある。滅多に旅行をする機会に恵まれない、シェフやレストラン関係者がその半分を占めているのだ。
食通や、評論家でさえ、真剣なコメントを口にする時には、世界中の料理を知らなければ話にならないないというのに・・・。
また、アジア大陸が、ほぼ存在していないかのように扱われていることが、興味深い。
東京をはじめ、京都、大阪、神戸のレストランは、まったく表記されていないからだ。
この時代、クリエーション、技術、流行の「通」は、東京を起点にし、その数はパリやロンドンやニューヨークなんかよりも、よっぽど盛んだというのに・・・。
歴史のモラルは透き通っている。料理界は早足で、今では筋肉質になってしまった。食の都パリさえ、ガイドブックが、冷や汗をかいている。
「Le Comptoir」のカンドボルドは、パリ中で一番予約がとれにくいレストランをもっているというのに、この機関からは、完全に無視されている。この現象は、パリだけにおこっていることではない。世界各国の食のシーンで見られる事実だ。どんな手段をしても、この動きには抵抗できないだろう。
食の世界は、捕みどころがなくなった。これこそが、すばらしいニュースだ。
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