このレストランで、一番うまいアミューズ・ブッシュといったら、それは間違いなく、はるばると時間をかけてやってくるという、この旅行過程だろう。
実は、フランスを発つ前から、ここでのディナーはかなり楽しみにしていた。
飛行機、タクシー、電車、バスを使って、やっとたどり着くレストラン。
かなり腹が減ってはいたが、このシューリアリズムなウィンザーホテルで、一皿目が運ばれてきたときには、心から感激してしまった。
「野菜のガルグイユ」は、愛情が盛りだくさんの、すぱらしい一皿。
50種ものサラダやハーブ、種芽が使われ、このホテルの大自然と料理とが、うまいハーモニーを醸し出している。見せかけだましはなく、見晴らしのいい場所でコンコルド塔が頭を突き出すような、一種の真実味を感じた。
レストランは、常に自然と一体になっていなければならない。
これは、高潔なレストランには欠かせない義務でさえある。
そんな訳で、ナスとレモンコンフィのピューレが添えられた、カレー味のバターでポワレしたヒラメと、ピーナツのマリアージュは、容易く仕上げられるものではないと思われた。
このエレガントな一皿のコンポジションの中で、重たく脂っこいピーナッツオイルは、どんな役目を果たしているのだろうか、と疑問にさえ思う。
デザートは、握りこぶしほどの大きさの、完璧なメレンゲの球体など、見た目と風味において、これまたすばらしい成功を収めていた。
その上、心を癒されたのが、シンプルさを2倍にした、サービス陣営の優しさで、いつも初心へ戻る勇気をもち、「世界の起源」へと進む気力を感じた。それは、まさにクールベの世界ともいえよう。
ミッシェル・ブラに扇動された料理は、心温まる人間性に溢れ、それが料理にまたひとつ、いい風味を与えていた。
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