彼は、数少ない“スターショコラティエクラブ”の一員だ。
香港にもう一つ、ブティックをオープン予定。彼のメゾン創立20年を記念して、Assouline 出版から本も出版される。ブッシュ・ド・ノエルには、定番もの、コンテンポラリー、未来派の全3タイプを発売。(詳しくはサイトへ)
ランデヴー
ジャン=ポール・エヴァンのサロン・ド・テは、パリのフォーブール・サントノレ通りにある。
彼はよく、その2階の窓際に座ってインタビューを受ける。
そこは、陽気で賢明に光が差しこむ心地いい場所だ。
ここで、彼はその整った自筆のメモ書きをたくさん取る。
彼は時間通りに現れた。
自分の店だから当然かもしれない。
インタビューの最中、彼の指先は曲がったりくねったりして落ち着かなかった。
ガナッシュを練ったりこねたりする注意心のようなものを感じさせる。
人生もそうだろう。彼の野望はかなり大きい。
苦さは、不愉快な短所?
苦さとはまず、私にとって遺恨を感じさせ、居心地を悪くさせる要素となるものです。
でも、ショコラにとっては、重要な役割を担うもので、その対局にある苦みは、甘味と酸味のバランスをたもつ役目を果たします。その場合、私が求めるのは、強烈でたくましいタイプのものですね。
これだけは絶対に使わないという豆は?
これといってありませんが、豆自身が誠実で風味が純粋なものを選びます。個人的には複雑な風味の豆を好みますが、曖昧さがあってはいけません。
ショコラは悲しみを吹き飛ばす役目を果たしますか?
その効果はあると思います。ショコラティエにしてみれば邪道かもしれませんが、私のおすすめは塩の華ミルクキャラメル風味のショコラ chocolat au lait-caramel fleur de sel 。このショコラは絶品で、悲しみを追いやるのには最高の解決法になるでしょう。
一番好きなタルトは?
もちろん、タルト・オー・ショコラです。とくに、固いガナッシュと室温のガナッシュが2層になったタルトは最高です。
タルト生地には、ショコラを少し加えます。ミルフィーユにヨーグルトを少し加えるように、タルトの苦みを浮き彫りにさせる役目を果たします。それから、ひとつまみの塩も、最高の風味を作り上げるために欠かせない要素ですね。
ショコラと音楽は合いますか?
特にそういう概念はありません。でも、私のサロン・ド・テでセレクションしている音楽は、穏やかでロマンティックなものが多いです。たとえばモーツァルトやカルラ・ブルーニみたいな。リラックスさせてくれ、詩的な雰囲気を作り出します。
手に負えない材料は?
間違いなくショコラです。もしここに明らかな関係があるとしたら、その関係は常に完璧でないといけません。私自身、まだ完璧であったためしがなく、早くそのレベルに達したい一心です。ここに、狭くて日常的でストレスのたまる戦いがあるという訳です。
あなたが作る商品の中で、改善したい部分は?
全部!それが私の日常です。とくに、ムース・オー・ショコラは、私が常に挑戦しているもので、軽さと強さの絶妙なバランスを見つけるために、常に苦労しています。
なめるほう?それともかじるほう?
まずかじってから、口の中で自然に溶かします。以前は溶けるがままにまかせていましたが、年とともに我慢が足りなくなったのか、今ではまずかじってしまいますね。
共感できない最高傑作は?
マーリオ・リゴーニ・ステルンの l'ultima partita a carte です。本自体は私の好みですが、どうしても長続きしません。
ショコラに合うワインは?
ガトーでしたら、スパイスのきいた、コート・デュ・ルーシヨンか、コート・デュ・ローヌを選ぶでしょうね。ショコラでしたら、あえて選びません。ショコラだけで十分ですから。これは食事をするときにも実行していることです。料理と料理の間にワインを口にしますが、食事の最中には飲みません。
やめられないショコラは?
キューバやブラジルの黒い板チョコ。
瞑想用のショコラは?
リキュール入りのショコラ。オードヴィに付けたチェリーみたいな。
お気に入りの場所、時間は?
次に引っ越す予定のラ・モット・ピケ大通りにあるアパート。4ヶ月前から、想像してはデッサンして造り上げてきました。
時間で言ったら16時でしょうね。お茶の時間だから。ほっと一息ついて、頭の中を空っぽにできます。
二度と行かない場所は?
大抵の場合、一度行った場所に再度足を運びません。冬のスポーツを除いては。
定番の贈り物は?
本。パトリック・ジュースキントの「香水」、アレッサンドロ・バリッコの「絹」をよく選びますが、時と場合に寄ります。
縁起をかつぐオブジェは?
鉄製のへら。どこにでも持っていき、旅行鞄の中にも欠かせません。これは、私の頭、そして手と素材を仲介するオブジェかもしれません。ラ・モット・ピケの店をオープンさせた時に見つけました。
好きなレストランは?
パリではイタリアンレストランのレイ Lei。家の近所でもあります。ル・ヴォルテールも素晴らしいレストランだし、イサミや衣川等の日本食、グラン・オーギュスタン通りにある不ペイン料理、フォゴンも魅力的です。
次回の出費は?
アメリカ式の2つのマットレスからなる大きなベット。
だれと一番仲直りしたいですか?
やさしい神様。