あまりに嬉しくて、フランスの全レストランを、前の人の肩へ腕をのせて踊り回るのは、そう容易いことではないだろう。
というのも、ニコラ・サルコジ大統領が、フランスのガストロノミーをユネスコの「無形遺産」に加入させるための考案を提出した、というのだ。
無形物の過程を踏んで、今現在僕らに捧げられた、生きた文明開花の瞬間を、存分に味わうこととしよう。
たしかに食世界は、ずいぶん前から過小評価され、下っ腹に脂肪をつけるだけの、邪悪で怠惰な大罪として扱われてきた。この世界は、ある意味天井が低い。しかしこの世界こそが、今ではもう稀になってしまった、温和で誰にでも手が届く親近的な世界ではなかっただろうか。
エンドウ豆は転げ回り、子牛はその舌や脳みそを差し出して、ナプキンを首にくくりつけた僕らの皿へとやってくる。
レストランに入って、スフレを膨らませ、牡蠣の殻をはずすことは、オペラを観ながら居眠りしたり、テアトルであくびしたり、歓喜きわまるユーリスに降参することと、同じレベルの文化的活動ではなかろうか。
更におかしなことには、付加価値税、労働時間短縮法や超過労働時間がサン・セバスチャンにいるみたいに偏屈になったこの世界で、補足的精神、真髄、他人がしているから自分もするみたいな、神に近づく類いの権利問題を、この世界に再度掻き立てることになった。
要は、この不思議な無形の世界に、衝動が起こり始めたということだ。
PHOTO DR / Petits Pois gravés des 20 femmes iconographiques du siècle. 2001 Presented in Foodwork. La Sala Vinçon, Barcelona.
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