レストランは、客がいないと成り立たないということを、僕らは忘れがちだ。
サッカー、演劇、オペラ、教会などがいい例だ。ちょっと想像してみればよくわかる。つまり、誰もいない客席を前に台詞を読み上げたり、静寂な大会場でゴールを決めたり、無信仰なムードの中で祈りの器を上げたりすること。
レストランも同様である。片方だけでは存在しないから、バランスが悪い。閉店したレストランに、空腹で着席することは、もっとも悲観な光景であるといえよう。
パリの空は、真っ暗な夜に竜巻が襲いかかっていた。ブーローニュにある、オーナーが変わったばかりのレストラン「キャップ・スガン」でのディナーには、まさにふさわしくない日だった。
空模様がどんどん悪化し、その一方、ここのテーブル席は見捨てられていた。厨房には、マニュエル・ユルティエを筆頭に、若い女の子のパティシエ等、しっかりした基盤のあるチームがいた。
歴史に残るほどではないにしても、心打たれるディナー。
黒のブーダンとミックスサラダ、エスペレット唐辛子風味のマンゴーソース。
牛のはらみ、骨髄のカリカリ焼き添え。
牛のほほ肉、赤ワインソース。
気前がよくてインスピレーションをうけたデザートには、りんごのジエール地方特製クルスタッド、キャラメリアのムース・オー・ショコラ、ピンクのプラリネのタルト。
人出の少ないレストランは、まるでソースの仕上がりを待ちわびているパスタのようである。
出会いから雰囲気が生まれ、レストランに生が宿る。
Le Cap Seguin
27, quai Le Gallo の正面
92100 Boulogne-Billancourt
Tel 01 46 05 06 07
45 ユーロ〜
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Photos/F.Simon
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