よくある話だ。魚が疲れ始め、新鮮さがなくなりかけたとき、料理人がよく使う決定的な手段。
スパイスで味を隠す。
まるで、死人が息を吹き返し、担架から体を起こして、気違いみたいにダンスを踊りだすような光景。その上、スパイスについている名前は、驚異的なものが多く、意味さえほぼ理解できないものばかり。突然、回帰線を越えたかと思ったら、もう次の回帰線を飛び越え、料理は税関の検印だらけのコンポジションに出会う。
こんな場合、たいてい食材は本来の風味を失い、存在をなくす。スパイスがマラカスをもって騒ぎ立てている横で、ホタテ貝は完全に無口になるというわけだ。ウコン、コリアンダー、四川省産胡椒、ショウガ、わさび、等々。
シェフは魔法の術で、ハルモニウムをどこかしこに使用し、地獄の騒動をおこしては、客を喜ばせる。そしてメディアは、それに恍惚する。
スパイスは、料理の友、腹の割れる相手であるべきだ。エコー、強い味方、伝達人、遠くの方で聞こえる歌声、遠い国からやってきて、適度な量で、適度な部分に使われるべきものである。その一方、食材に関しては、スパイスに負けない強さをもたなければならない。
うまい料理とは、食材である魚や肉が前進し、スパイスはその横で、雰囲気作りに身を潜めているような料理である。
Photo/F.Simon
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