SIMON SAYS! JAPON

８月のパリ 最高の時間

８月は、気まぐれなパリを味わうには、最高の月だ。肌はこんがり焼け、機嫌もそこそこ、うぬぼれきった歩行者道。何日いても飽きない。人生と街を、思い切るべきだろう。こんな無気力な毎日に、リズム感を運んでくれるような店を紹介。料理は、ケータリングレベルだが、悪くはない。なにせ、景色が最高だ。
Zyriab
L'Institut du Monde Arabe
1, Rue des Fossés Saint-Bernard 
75005 Paris
Tel : 01 55 42 55 42
約40〜50ユーロ

Photos / F.Simon

馬鹿げた行為の快感

火星人でさえ、開いた口が塞がらないであろう、この類いのジェスチャーは、きっと、レストランでしか経験できない。
パンには手を付けずに、メイン料理を食べ終える。デザートメニューが渡される瞬間。ゴミ一つ落ちていない、綺麗なテーブルナプキンを前に、メートル・ドテルがたつ。綺麗に磨かれ上げた、ラマス・ミエット Ramasse-miette （パン屑を集める道具）を、またまた綺麗なモノグラム模様のナプキンの中から取り出して、振る舞う、完璧な仕草。寓話は、穏やかで、余韻が長く、勤勉だ。
ラマス・ミエットが、白いコットンの海を、泳ぎ、何度も行っては帰ってくる。そして、紋織りの入れ物の中へと、戻って行く。
これこそ、パラスレストランの現状だ。そんな馬鹿げだ仕草は、メートル・ドテル本人をも、楽しませる。意味はないが、なんとも愉快なジェスチャーは、他を探せば、たくさんあるだろう。一人で店に入ったのに、アペリティフは飲むかと聞いてきたり、フランボワーズの下に、ミントの葉を飾ったり、ワインの栓のにおいを嗅いだり。
今日の、僕の馬鹿げた行為はというと、写真のとおり、山のような生クリーム！中身が見えないくらいの生クリームを、もちろん僕は平らげた。最高の悦楽。ポール・ボキューズでの一こま。
Photos / F.Simon

フィレンツェ エノテカ・ピンキオーリ ヨーロッパ的詐欺の頂点

こんな信じられない話を聞いたら、ここで紹介しない訳にはいかない。
フィレンツェにある、３つ星レストラン「エノテカ・ピンキオーリ」での、ディナー。つい最近、友人が経験した話だ。

赤ワインを頼んだら、４００ユーロするものをすすめられた。冷や汗を流しながら、すすめられたワインより、いくらか安い、３５０ユーロのワインに目をやる。完全に動揺した、最悪の状態。ワインのグラスサービスはない。１２０ユーロの白ワインがあることを知らずに、ソムリエに言われるがままに、ワインが決定。
予約の際には、ソムリエ自身が、予約確認のメールをくれて、対応は丁寧だったけれど、こんなに晴れやかな詐欺は、他にあるだろうか。

そんな場合、すぐさま、堂々とレストランを去るべきである。的確に対処して、文句もつけて、胸を張って逃げるべきだ。そんな店を知らなくても、人生の楽しみは、もっと他にもあるからね。
Photos / F.Simon

屋台ハンバーガー 本当においしい？

パリ、サントノレ市場。この屋台の前に列をつくる、うれしそうな人たちをみていると、何か大切なものを見落としたんじゃないか、という気がしてくる。２０分も並んで、たしかに悪くはないが、飛び抜けて美味しいわけでもない、このハンバーガーを、立ったままかぶりつく。炎天下、椅子に積み上げられたパン、屋台の下に並べられた皿を前に、僕は思わず首をかしげてしまうわけだが。

Photo / F.Simon