パンテオンの右手にあるこのトラットリアは、アルマンド・アル・パンテオンといった。
内装からは完全にツーリストの隠れ家的印象を受けるのに、たこ、野菜、ボンゴレスパゲティーは究極で、接客もうまい。シェフは各テーブルを挨拶に回っていた。自分が作る料理に情熱を示す彼を前にすると、なんともお手上げだ。間違いなく覚えておくべき一件。
Armando Al Panthéon
Salita de' Crescenzi, 31, I-00186 Roma, Roma (Lazio)
T. 06 68 80 30 34
www.armandoalpantheon.it
Map
Photos/F.Simon
その朝、フルヴィオ・ピエランジェリーニとタクシーへ乗り込んでVia Cola di Rienzoへ向かった。
「ローマ風ストリートフードってやつを知ってるか?」
僕にそう言った後、彼は通りの204番地、Benedeto Franchi の店の前で車を止めるよう、運転手に指示した。
そこには彼の息子がいて、そしてベネデートも後から出てきた。
品位がありならも、茶目っ気でキラキラしたドライな印象をもつ紳士。フルヴィオは、感動しながら彼の手を取っていた。
僕らは最高にうまいライスボールを数個頼んで、フルヴィオンのお気に入りのピザ屋へ直行したが、11時に到着したばかりに、Pizzariumはあいにく営業前だった。
挨拶したのと、グルメな店に足を踏み入れるたびにフルヴィオが表現する、その優しくてとろけるような彼の友情表現を、僕はこの目で確認しただけだった。
もうすぐ正午。フルヴィオはシシリア島行きの飛行機が待っていた。
Benedeto Franchi
Via Cola di Rienzo, 204, I-00193 Roma, Rom (Lazio)
T. 06 68 74 65 12 04
Map
www.franchi.it
Pane en Pizza,Pizzarium, via della Meloria, 43
T. 06 39 74 54 16
Map
日休
Photo/F.Simon
フルヴィオ・ピエランジェリーニと一緒に紹介した2件のレストランは、前置きに過ぎない。
彼は、十数年前に僕がサン・ヴィンチェンツォで発見した驚異的なシェフだ。それで僕は、彼をもとに「トスカン」という小説を書き上げたくらいだ。
以来、機会を見ては再会していたが、ローマでの再会は稀な出来事だった。彼は、ローマにあるホテル・ド・ルシーのコンサルタントをしている。大手チェーンのロッコ・フォルトのホテルだ。
神話的な庭園に僕らが到着したのは10時だった。
そこで、さっと姿を消したフルヴィオは、地獄のような3皿を用意していた。
特製エビのスープ passatina di gamberi, キノコが添えられたシンプルな魚の一皿、胡椒とチーズのラビオリ、そしてコーヒーのアイスクリーム。
ムルソーの口臭のなか、気絶してしまえそうだった。
翌日、ヴィッラ・メディシスで、深夜に僕を待ち受けている劇的なトリマルキオの饗宴の再現も、もうぼくの頭の中をかけめぐっていたけどね。
Hôtel de Russie
via del Babuino, 9 I-00187 Rome (RM)
T. +39 06 3288 8830
Map
Photos/F.Simon
フルヴィオ・ピエランジェリーニと一緒に、すでによろめきながら、ずいぶん庶民的なレストランの前で足を止めた。
その名も「ダール・フィレッターロ」。
ここは鱈のフライが名物料理だ。びっくりするくらいの客がいた。
フルヴィオはおかまいなく、2人の女性がテキパキと仕事をこなしている厨房へ入って行く。中も外も満席だ。
時計の針はもう10時を指そうというのに、僕らは相変わらず夕食にありついていなかった。
Dar Filettaro
Largo dei Librari, 88
T. 06 68 64 018
Photo/F.Simon
ホテル・ド・ルシーの庭園でアペリティフをとった後、フルヴィオ・ピエランジェリーニと共に、タクシーで向かった先は、エピスリー兼レストラン「ロッショーリRoscioli」。
ここでは、フルヴィオはまるで救世主扱いだった。
モッツァレラ、アーティチョーク、ハム、パスタ、タルタル・・・素っ気ないテーブルが見る見るうちに、最高級な食材で埋め尽くされた。しゃべっている暇もない。
バーも含めて、ここは完璧だった。いい感じの客層に、陽気な雰囲気。
ローマは最善を尽くしている。
綺麗な女性達、夏の終わりのセンセーション。そしていいワインの突風。
Roscioli
21-22, via dei Giubbonari
www.anticofornoroscioli.com
T. 06 687 5287
Photos/F.Simon
ホテル・ド・ルシー Hotel de Russie の庭園で、僕はヒーローに再会した。
ご存知のように、フルヴィオはトスカーナ地方サン・ヴィンチェンツォにあった彼の店を閉めた。今は、ベルリン、ブリュッセル、ローマにパレスホテルをもつ大手チェーン、ロッコ・フォルテのコンサルタントをしている。
彼のポケットにはいろんなプロジェクトが隠されているようだが、今は旅行をしながら人生を楽しんでいるようだ。現実を見つめながら、夢を見ている。
相変わらずの落ち着きのなさは、人を惹き付けるものがあるが、それでも彼は冷静で幸せそうに、僕の目には映った。
ホテルの庭園で、僕らの宵は19時に始まった。パルマ産ハム、シャンパーニュ、グリッシーニ・・・。
続きはまた明日。
Photo/F.Simon