SIMON SAYS! JAPON

ダマスをもう一周り Semiramis

ダマスにいた僕は、アレッポへ発つまでまだ数時間あった。
だからタクシーに飛び乗り、ノウラ地区にあるパティスリー、セミラミへと向かった。
僕は、この類いの人口密度の高く、強迫的な場所が好きである。
甘いものに目がない客達が、甘い地獄の底へ落ちながら、鏡をこえたところだった。
快感。

それでも、店内は大理石のような冷たい冷静さを保ち、販売員は要領よく、こちらの好みを当てながら、目をむくほどにうまいバラやピスタチオのお菓子をサービスしてくれる。
僕以外はみんな団体客だった。

Photo/F.Simon

旅行の続きはアレッポ

このすごい旅行はまだまだ続き、明日はアレッポを訪問。中東料理と地中海料理が専門のグルメな作家、アニッサ・ヘルーが、念入りに調査してくれた。

伝説のホテル、スーク、石けん、レストラン、ジュリアン・ウェイス所有の１４世紀建築マムルークの宮等々。

Photo/F.Simon

ダマス 悪魔のアイスクリーム

ダマスのスーク、アルハマイダにて。今流行りのアイスクリーム屋の近所、５４番地にあるこのアイスクリーム屋は、ちょっと控えめだれけど、味はずっといい。その差は、パリのアマリノ Amarino とグロム Grom くらいある。
この小さな宝石は、なめらかで少し黄灰色。中には、胡蝶蘭の球根、樹脂、濃厚なクリーム、バラの香りの水と、もちろんピスタチオが入っていた。
近所の人たちに交じって、このすごいスペシャリティーを味わう。1,5ドルの Bilkashta がおすすめだ。
日常生活の一場面。
まだ幼い妻が産んだだろう赤ん坊を連れた年配の既婚者たち。

Photo/F.Simon

ダマス スークと仙女の優しさ

かなりほっとしたことは、スークで、こちらの邪魔をしに向かってくる奴がいなかったことだ。
この一週間でたったの一度だけ、チューインガム売りのガキにつつかれたくらいで、そのガキも、すぐに大人がやってきたかと思うと、ひどく叱りつけられていた。
だから、スーク訪問は幸福そのものだった。
カラフルな発酵飲料やさまざまな匂い、目移りし続ける視線を存分に味わった。
男達の視線は正直でダイレクト、控えめだけれど堂々としている。上っ面さがなく、心の中をあさられているかのようだった。
女達の視線は、わかりにくい。なんといってもスカーフで覆面しているからね。しかし、たまに女性の視線を目にするときには、こちらが震え上がってしまう。
スカーフの中に隠された視線は、あからさまな視線よりも強いと言うのか。

Photos/F.Simon

ダマスのタリスマンホテル

今回の旅行は、僕がずいぶん前から待ちこがれていたいたものだった。
いつから待っていたか、ってことだって覚えている。
フルヴィオ・ピエランジェリーニの家でのディナーだった。究極の鳩料理をを仕上げた彼が、その料理にあてた名前は「まだしてない旅行から帰国した後の鳩料理」。
食事の最後に、それがどの国を指しているのかを彼に聞いた。
シリア。

その一件から、かれこれもう５年になる。この旅への願望は、僕の頭の中や心の中に常時浸っていたものだ。

初日の夜は、タリスマンホテルに到着。ダマスでも筆頭のホテルに違いない。
アンティークな美しいホテルには、パティオ、陶磁器、大理石、セピア色の雰囲気、夜の薄明かり、そして永遠なる鞭打ちの刑の色をした高カロリー朝食。
一泊朝食つきで１９０ドル。
いい気候だが、けだるい熱気は３０度にもあがった。

Talisman Hotel
T. +963.11 541 53 79
www.talismanhotels.com

Photo/F.Simon