実の話、愚かにも尻込みしながら現地に向かった。
結果は?
甘美で、優しい街に、感無量。
この街の輝かしい食は、トニックな寛容さがみなぎり、腹を一杯にすることは、できたてのブリオッシュをそっと開くような、快感でさえある。
大陸が一体となる場所。難しく考える必要は全然ない。一つのシンプルなサラダからでさえ、この街の寛大さを感じるから。サラダネギ、ミント、赤ピーマン、ウイキョウ、小カボチャの、簡単なシャキシャキサラダ。それは、僕を無防備状態へおとしいれたかと思うと、やがて元気を運んできて、無駄のない開けた感覚を与えてくれる。
メイン料理は、のんびりしているが、そんな無駄時間の調子を取るように、ヨーグルトが一緒にサービスされる。忘れてはならないのは、ここには大きな川があるということ。そして食文化が一体となる地点。
のんびりしていて、怠け者で、半透明な感じ。それはまるで、ボスポラス海峡の靄や、セイント・ソフィーの夢の世界に迷い込んだみたいだ。
2つのおすすめレストランを紹介。
1件目は、少しばかりスノッブだが、出されるものには、白旗を上げざるを得ない。ある建物の3階。かなりわかりにくいところにある、アパートを改造して開いたレストラン。 Mangerie, Cevdetpasa 69, kat 3, dans le quartier de Bebek (212.263.5199)
2件目は、すこしカジュアルだけど、 la Lokanta Helvetia, general Yazgan Solak N°12, quartier de Tunel (212. 245 87 80)
投稿情報: 23:34 カテゴリー: フランスの外で | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
イナが、大阪へ発つのに先立って、おすすめの店を尋ねてきた。
大阪は、どこか秘めた力をもつ街の一つだ。
いつも話題を独り占めしてやまないフィレンツェやミラノ、ニューヨークや東京とは、ひと味違う。魅力的だが、いつも我慢して地団駄を踏んでいるような街。
ボローニュやシカゴがその類いだ。
日本では、大阪がその代表選手。
列島の西部、カンサイに位置する、日本第二の大都市、大阪。
城と、犬がうろつく庭園を別にすれば、街自体は、たいしてセクシーなものではない。はっきり言って、退屈で、もたもたしていて、真の魅力を感じない街・・・。
そんな環境において、生き伸びければならないレストラン陣営は、つらい立場にあるだろう。東京が、四六時中、世界中の感心の的になっている一方で、大阪はそれに対決できようか?
勝ち目はない・・・。
それでも、大阪の料理人たちはうまくやりくりしている。
「食い倒れ」と称する地元市民の食に対する情熱を前に、あたって砕けろの信念だ。
大阪は、間違いなく、好きなときに生まれ変われ、運命が簡単に左右して、文句を言う奴の口をふさぐには、最高の環境だ。
東京から2時間半のところにある大阪は、要は東京の隣り町。わざわざ新幹線に乗ってまで、足を運ぶ価値のある食事処がある。
一件目は、「シゲオ・ナカムラ」。
一歩足を踏み入れるだけで、何か違う空気を感じるだろう。
思いがけない場所にあり、入るのを躊躇してしまうほどの小さな廊下。
本当にうまい飯が食えるのか?
勇気をだして店内に滑り込み、カウンターの椅子に腰を下ろしたら最後、どんどん出される料理に、身を任せるだけだ。
オーナーは、あの大阪地下鉄脱線事故で奥さんを亡くしたというのに、いつも笑顔がたえず、仰天するくらいのシンプルな料理をつくる。
白ネギの酢づけ、産地直送の新鮮なサラダ、かにのコロッケ、殻をむいただけのゆで卵 etc・・・。
細かいところまで気が行き届いている。
ここでは、どんどんレストランの値段が上がってきている東京(80〜100ユーロ)の三分の一の予算で、大晩餐が体験できる。
二件目は、「寿し芳」。
ここでも、鮮度の高い魚や、うどん寿司などの地元の料理が味わえ、優雅な魚のさばき方が、素材のよさを強調している。
三件目は、「Fujiya」。
コンテンポラリーな内装で、オープンキッチンを構えるこのレストランは、お母さんがサービスを担当、息子とその嫁が調理場に立つ。ヨーロッパを食べ歩いて勉強した料理は、少しスペインの香りが強く、タパス料理の量は、完全に現地を思わせる。ここでも、ちゃんと料理を自分のものにしていて、その上遊び心もきいており、素材の質もいい。
さて、旅行にでると必ず体験することだが、故郷フランスのノスタルジーに浸りたい時には、ホテル・ニューオータニの、ドミニク・コルビのレストランがおすすめだ。
感じのいい猛威で作られる彼の料理は、ジャパニーズタッチのうまく利いたフランス料理で、エネルギーを10倍にしてくれる。どの料理も、ビックリマークがつくほど、そのハーモニーがすばらしい。
レンコンとチョロギ、鶏のブイヨン
アワビのトリュフ風味、サラミ添え
甘エビ、止々呂美産のゆず風味のコンソメ
カブとにんじんと田辺大根、その葉っぱのソース添え
北海道産牛フィレ肉のロティー
野菜と牛のしっぽのからから煮
エビのスパゲティー、りんごであえたブータンのクリームソース etc・・・
ここは、子午線が直下している場所で、料理がうまい。
10年分のエネルギーを与えてくれる。
客席からは、大阪の街が見下ろせ、ワインも充実しているし、パンは手作りだ。
ドミニク・コルビは、東京にもう一件、レストランを持っている。
銀座のど真ん中に位置するカフェレストラン「シージエム・サンス」。ここでも、彼の腕前が存分に味わえる。大阪より抜け目がなく、コンテンポラリーで、信頼できる、大都市のレストランだ。
シゲオ・ナカムラ
大阪市中央区島之内2丁目6−5、長堀
Tel : +81 (0)6 62 12 58 56
寿し芳
大阪市北区南森町2丁目3−23 日宝北森町ビル1階
Tel : +81 (0)6 63 61 00 64
Fujiya1935
大阪市中央区鑓屋町2丁目4−14
Tel : +81 (0)6 69 41 24 83
ホテル・ニューオータニ
大阪市中央区城見1丁目4−1
Tel : +81 (0)6 69 41 11 11
投稿情報: 15:15 カテゴリー: フランスの外で | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
芸能人や金持ちが集まるスイスのスキー場、クシュタッド Gstaad。
雨。ついてない。
ともかく、ここは、食べ物がものすごくおいしい。甘やかされて舌の肥えた子供たちを前に、手も抜けない。
昨夜の Chesery でのディナー。食材の質はもちろん、高潔で几帳面なドイツ人が行う、仕事の功績を感じる。魅力的な名前を持つシェフ、Robert Speth の見事なキュイジーヌ (Tel 033 744 2451)。
メッシュの入った思春期のガキが、髪の整ったその母に口をきく。
「おかあ、キャビアが食べたい!」
「だめだめ、だめっていったでしょ!」
快感。
会計、202スイスフラン!大丈夫、もうすぐここを後にするから。というのも、とりわけ、パリのレストラン、バタランでのディナーを記事にしたいから!
投稿情報: 20:04 カテゴリー: フランスの外で | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
上海
ジェット・ラグ。それはまるでたちの悪い風邪のようなもの。
あらゆる物事が、奇妙にだらけて見える。朝の5時であろうが、夜の10時であろうが、ようは同じこと。
この街は、摩天楼、古い自転車、危険な少女たち、そして眠れない夜からできている。
ホテルの地階にあるスーパーマーケットでは、消費の急な方向転換、購買欲のよどんだ高揚、解放された振る舞いの混信を感じる。
そこは、パリの商業地区、べルシー・ヴィラージュを思わせ、まるで、スピード写真ボックスのなかで、呆然とした自分の青白い顔を見合わせているようだ。
シャングリラホテルにある、Jadeでの過酷なディナー。
ここが、フランス料理界のブルース・スプリングスティーン、ポール・ぺレ Paul Pairet が、舵を取る場所。
記憶にあるだろうか?
10年ほど前の、ジョルジュサンクのカフェ・モザイク、そこにいたのが彼だった。
シドニー、イスタンブールを後にして、彼の内に秘めるいつもながらの落ち着かない情熱は、疲れを見せることを知らない。
食べ過ぎた。
このキーボードで、フランス語のアクセントが使えないのが笑える。”食べ過ぎ”が、”いっぱいのマンゴー”になってしまう。
また明日、いやまた後で、次も僕の番だ!
投稿情報: 23:10 カテゴリー: フランスの外で | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)