昨朝に到着して以来、嬉しい足蹴りの連発!
旅の印象だけはここで紹介するが、おすすめ店リストは、9月頭のル・フィガロ紙にて公開予定。その間、心構えしてお待ちいただきたいが、パソコンの隅に忘れられていた、マサミチ・カタヤマ氏のおすすめ店リストをまず紹介しよう。今まで公開していなかったことが、恥ずかしいくらい。スミマセン。
日本は、酷暑と少しの雨。
Photo/F.Simon
もう数年前の話になるが、東京でシェフパティシエールとして活躍している、日本人の友人、ミホとの、夕食の席での出来事だった。まだ若いシェフ、ケイ・コバヤシと出会った。
彼は、ジル・グージョン Gilles Goujon やミシェル・ウセール Michel Husser、そしてプラザアテネ時代の、ジャン=フランソワ・ピエージュ Jean-François Piège のような、名高いレストランの厨房を経験していた。そしてその夜、アラン・デュカスのレストランで、クリストフ・モレ Christophe Moret のセカンドシェフとして、驚異的な料理を用意してくれた。彼の誇り高いながらも謙虚で、しかも厳密的でもある経歴に僕は感心し、一発で心が打ち解けたものだ。
この7年間、彼はとんとん拍子にポストを変え、日本料理が、フランス料理の中へゆっくり浸透していく様子を、じっくりと観察してきた。
彼は、こう語る。
「日本人が持ち合わせるものは、きっと、料理に表れる軽快さ、繊細さ、そしてデリケートさだと思います。厨房で僕は、たいてい魚係りに適用されますが、それは、日本人が長い時間をかけて、魚のさばき方や切り分け方、身の流れに沿って魚をどう扱うか、ということを、学んでいるからです。その上僕らは、魚をあまりいじらずに、加熱する技術も持っています。」
時々、僕らは電話し合い、彼は自問や悩みを打ち明けるのだが、自分のレストランを開く、という夢だけは、相変わらず持っているようだ。たしか2年前、リスクの高い企業と契約する話があった時、その意図に乗らないよう、僕は必死になって彼を説得した。僕のアドバイスが、どれだけ耳に届いているのかは、分からない。どっちにしろ大切なのは、個性を発揮できる場所へ、彼がうまくいざなわれることである。
少し前に、彼はプラザアテネを辞職した。正直言って、かなり思い切った行動である。その後、フランス語のレッスンを受け直し、モンテカルロのルイキャンズの厨房で、インターンを終えた。
そして先日、テイスティングディナーをするから、との招待状を受け取った。正直な話、「ぶりっこな女の子料理」を頂くのは、好きではない。このような類いの招待状には、普段は絶対にのらない、と誓ってでも言える。お分かりのように、僕の居場所はどこにもないのだ。しかし、僕はケイのために、友人カップルを誘って、その招待に預かることにした。
その夜、滑稽な話にも、僕らは3人並んで、学校長みたいにテーブル席へついた。
ケイは、脱色したひよこ色の髪と、ファンキーないい顔つきで、僕らを待っていた。僕の友人と彼の妻を前に、彼は完璧なデモンストレーションを披露した。イチゴとトマトの料理は、確実に一歩はずれていたが、その他の料理は素晴らしかった。
現在ケイは、レストランと投資者を探している。なんとか手助けをしてやりたい、と思うのだが、僕の自然体で野蛮で孤独主義的な気質から、その分野の知り合いは数少ない。ともかく、くじけずに戦い続けるよう、僕は彼を心から支援している。もし彼がこの記事を読むことがあったら、もはや彼は独りぼっちじゃない、ということだけでも分かってくれるだろう。今は、じっと待つのみだ。こののブログでも、たびたび彼のニュースを紹介しようと思う。
がんばれ、ケイ!
Photos/F.Simon
リシュリュー通りにあるこの店の評判がいいのは周知の事実だ。
だから昼食に Issé 風湯膳弁当を頼んだ。35ユーロでデザートつき。
この弁当に僕の感情が動かなかったのは、きっと相方との真剣な会話に夢中になっていたからに違いない。
焼きうなぎ、寒天のスパゲティー、柿とアーティチョークと紫蘇の天ぷら、ちんげん菜、ちょっと大きすぎる鴨もも肉のコンフィの西京味噌風。
確かに僕の気持ちはどこかにとんでいた。だからもう一回食べにくる必要があるだろう。
しかし、僕らの隣りの席にいた女性の2人組も、この日の僕同様、ぼけていたようだ。
注文時に1人が「大きなサラダが食べたいんですが・・・こんな感じの・・・」
客の気まぐれな思考に、料理人の気が狂ってしまう日が多々あるに違いない。
Issé
45, rue de Richelieu - 75001 Paris
T. 01 42 96 26 60
Map
Photos/F.Simon
フィリップ・ピキエ出版から発売されたばかりのこの絵本はどうしようもないほどいい仕上がりだ。
もし東京を少ししか知らないか、まったくご存知ないようだったら、おかしな次元でこの町が発見できる。
文学の急流とでもいえる、すごいクロッキーや道端の風景が盛りだくさん。
著者はかなり滑稽なタイプらしく、日本での生活についてのインタビューをこう語る。
「フランスに帰国してから、よく”中国はよかった?”って聞かれたよ。だからぼくは”日本人はサービス精神に長けた人たちだったよ”って答えたよ。」
こんなにずっしりした本が24ユーロは安いでしょう。
Tokyo Sanpo
Photo/F.Simon
今話題のラシャペルのエクスヒビションからの帰り、ポン・ド・ロビ通りにあるこの謙虚な店の前を偶然通りかかった。
店内は決してグラマーとは言えないし、店員も決して気の利く顔ぶれではない。しかし信用できる秘密の隠れ家、しかも最高のお茶が楽しめる場所を発見した気分だった。
思い通りに香りがつけられたオーガニック緑茶がずらりとメニューに並ぶ。黒ゴマと野菜がついた豆腐がでてきたときには、これ以上何を要求できよう。
ここでは平和が保障されている。
セピア色の雰囲気の中、そろばん勘定に余念がないオーナー、客層はみな同じ分類の人間たちで、みんな満喫している様子だった。
Rue Pont de Lodi - 75006 Paris
T.01 43 29 61 31
Map
Photo/F.Simon
正直、僕は公園と城に近いニューオータニの方が性に合っている。
快適で、古風で、最高のおもてなしが期待できる。
特にサプライズのない部屋からは、ドミニク・コルビシェフのフランス的価格で日本の食材を使った料理が楽しめるレストランと、大阪の街が見渡せる。
ドミニク・コルビシェフこそ、本当に日本に目がない男だ。僕の今回のレポートにも多いに手を貸してくれた。
メルシ!ドミニク。
写真のホテルは、堂島。綺麗でブティックも備えたホテルだ。
正午に着いた僕は疲れきっていて、一刻もはやく部屋に飛び込みたかった。
しかし、早くチェックインしたかったら、追加料金として6000円を払えという。正規のチェックイン時刻までは、後3時間ちかくあった。
頭にきた僕は、翌朝早々チェックアウトをしたが、奴らはなにもなかったような顔をして手続きを済ませた。
最悪。
Photo/F.Simon