子供用のプティレシピ
些細な子供がいないのと同じように、些細なレシピなんてものは存在しない。
経験上、子供たちは大人扱いされることを好むらしい。チキンをグリルする際に、そんな事実に気がついた。
日曜の夜のチキングリルは、たやすい作業ではない。3歳以下の子供が脇にいたらなおさら。しかも彼らが椅子の上にのぼって、僕らと同じ背丈になっているときたら完全に逃げ道がない。
毎週日曜日の夜には、チキンがオーブンに入るのを、見てもいいけど気をつけるように言ってきた。その際、小さな口と手のひらの合唱がたいてい鑑賞できる。
チキンの方はというと、これもやっかいものだ。お尻から玉ねぎはもちろん、レモンのコンフィとエストラゴンまで突っ込まれる。それからオーブンへ。
ゆっくりゆっくり。1時間半の焼き過ぎも問題ない。むしろおこげが付いていいくらいだ。逆に、生焼けはいただけない。手羽を起こしたときに赤い身を目にすることほど嫌な気分になることはない。
4度目くらいになってくると、子供たちにそんな作業を手伝ってくれることをすすめてみる。子供たちは、鶏の後ろからレモンのコンフィやエストラゴンを突っ込む。もちろん僕らの手がそれを後押しする。お望みなら、鶏を串刺しする時には、大きな悲鳴も付いてくる。それは、大好きな漫画を見ているときと同じくらいの音量だ。
串刺しにしたチキンをオーブンに入れたら、 子供たちと一緒にお気に入りのクッションをもってきて、オーブンの前に座り込み、鶏が回るのを眺める。テレビ番組よりずっとよく、暖炉のたき火を眺めているくらい居心地がいい。
そろそろソースの準備にとりかかろう。ソースはすりショウガ、バルサミコ酢、蜂蜜、コリアンダー、レモン汁、干しぶどう、白葡萄、いちじく等々、季節によって材料は変わってくる。
オーブンの前では、いろんな会話もできるだろうが、何も言わずにじっと眺めているだけでも良い。オーブンの熱で暖かくなってきたら、眠りこんでもいいくらいだ。
鶏が焼けたら、子供は必ずしもそれを口にしなくても良い。切り分けるのを手伝ってくれたり、20サンチームコインやチョコレートや綿棒で皿を飾ってくれたり、それをテーブルまで運んでくれたりしてくれるだけで十分だ。
子供たちは、こんな些細な日曜の夜を忘れないだろう。そして僕たちも忘れない。チキンもきっと。
Photo/F.Simon