By F.Simon
このホテルが今回の小旅行で一番良かった。
石壁、テラス、ゼラニウムが溢れる村の町並みは、こちらを無防備にさせるくらい魅力的だった。夏場も特に混雑しない。夜になるとささやかで親しみ深い幸福な時間が過ごせる。
ホテルは理想的な立地条件で、いいテラスを備えていた。
料理に関しては、バスク地方の布で出来たすごいカーテンをよじ上れるくらいの感激は受けないが、このホテル中に漂う温かみがすぐに伝わってくる。つまり、16世紀に建てられたバスク地方の美しい建物に彷徨う、代々引き継がれた魂を肌に感じる。
オーナーの息子、ジャン=バティスト・フォゴアガ Jean-Baptiste Fogoaga が僕らを出迎えてくれ、彼自身が手頃な値段のワインが並ぶワインメニューもすすめてくれる。(ソシアンド・マレ2001年ものが50ユ—ロ!)
そら豆と鴨の砂肝のサラダ、ウサギの蜂蜜風味、そして締めくくりは、羊乳のカイエのクレーム・ブリュレ。これ全部で23ユーロはすごい。
魅力的な客室が80ユーロから。裏側に面している部屋がお勧めだ。
バスク地方のセンチメンタル溢れる最高な朝食つき。
Hotel Arraya
Bourg, 64310 Sare
T. 05 59 54 20 46
www.arraya.com
Photo/F.Simon
おかしな話だが、ミシュランは、星を授与するレストランがあまりにも明確なために、逆に間違いを起こす場合がある。
その中でもかなり顕著な例が、ビアリッツにあった。
シシノーSissinouは頼んでもいないのにいきなり星を失い、新米のロジエ Rosiers にはちょっと早すぎる星が落ちてきた。
少し前までアルノー・ダガンが成功をおさめていた「レ・プラタン」をアンドレ&ステファン・ロジエが買い取り、うまく時計の針を合わせたかと思った途端に、星を獲得した。
この星の授与に際して、ミシュランがとくに大きな賭けに出たわけではない。アンドレ・ロジエはフランス最優秀技術者の名誉MOFを獲得した初めての女性シェフだからね。
リゾットの調理には22分かかるはずなのに、6分で運ばれてきたそれは半生のものだったとしても、彼女の料理が技巧あるものであることは確かである。いちょう蟹のジュレはちょっと重たかったけど、これもまじめで基盤のしっかりした料理だった。
ピプラッドソースのアンコウ等、魚料理もまあまあいけたが、僕らが期待しているものかと言えばそうではない。
ちょっと馴れ馴れしすぎるサービスのイメージが強い、陽気な雰囲気のレストラン。
Les Rosiers
32, avenue Beau Soleil - 64200 Biarritz
T. 05 59 23 13 68
www.restaurant-lesrosiers.fr
1人約40ユーロ
Photo/F.Simon
この地方では知らぬ人のない堅固なレストランでのディナー。
忘れ去られていた時代を超えてようやくミシュランから2つ星を授かり、認知されたという至福感を取り戻した。
代々伝わるこのホテルレストランは、田舎の格式張った華麗さ(すこし騒音のするルレ・ゼ・シャトーという感じ)と、オーナー、フィルマン・アラムビッド Firmin Arrambide の息子、フィリップが連れて帰ってきたアイデアと活気を思わせる新世代の青春的雰囲気が混ざりあっている。
希少なエネルギーが注がれた料理は、しっかりと仕事がなされていて、40ユーロのコースメニュー(アスパラガスのスープ、ムール貝の付いたメルルーサ、そしてコーヒーのパフェ)はかなりよかった。
アラカルトはあらかじめ想像できる料理ばかりだが、満足できる。
ピーク時には、ちょっと多すぎるくらいかなりの人出だ。
しかし、この店が21世紀の時代に追いつくまでには、(店内は特に)もう一踏ん張りしなくてはならない。
Les Pyrénées
19, place du Général de Gaulle - 64220 Saint Jean Pied de Port
T. 05 59 37 01 01
www.hotel-les-pyrenees.com
一部屋100ユーロから
Photos/F.Simon
実存的なショックとグルメな旅行をお探しなら、ヴェロニクとアルノー・ダガン夫妻が経営するエジアをお勧めする。宿泊と食事がセットになったペンションだ。
盛大な景色と伝統的な建物の中にある衝撃的なデザインの客室は、決定的にモダンな仕上がり。サイトをご覧頂けば、グザヴィエ・レイバー Xavier Leibar が地元職人と共作した建物を拝見できる。
エストニアの作曲家、アルヴォ・ペルト Arvo Pärt やエリック・トリュッフェの音楽が流れる、他に2つとしてない雰囲気。
客室が5つしかないことからも、夜は少人数での食事。アルノーが厨房に立つ。陽気な市場の食材を使ってのインスピレーションある料理は、さっと焼いただけの魚料理、豊富な野菜、軽く火を通したほうれん草、茹でたフォアグラ等。
ヴェロニックはワインセラーを行き来して、かなり希少なものから思いがけないものまでを、僕らのテーブルに運んでくる。
爆発的な大自然の中で過ごす贅沢な宵。純粋な幸福だった。
Hégia
一部屋、夕食と朝食とワイン込みで650ユーロ。
二泊目から600ユーロ。
Kurutxetako bidea, Zelai 64240 Hazparne
T. 05 59 29 67 86
www.hegia.com
Photos/F.Simon
オーベルジュ・バスクを予約できてこの日は幸せだった。
シェフのセドリック・ベシャッド Cédric Béchade とは、彼がパリのプラザアテネにある庭園テラスで働いていたときに、僕が頂いた彼の料理に極度なショックをうけて以来、面識がある。
彼から電話でバスク地方へ出向することを知らされてから2年。彼は独自のオーベルジュを開いた。僕にとって、成功して、円熟していて、仕事を把握しているこのオーベルジュこそ、オーベルジュの見本と言えるだろう。
ここでは本当にいいものが頂けて、ディレクター兼ソムリエの、サムエル・アングラエール Samuel Ingelaère も抜け目がない。
あらかじめ言っておくが、シェフのセドリックが僕と友人関係にあると思わないで頂きたい。友人ならお互い山といる。
ただ、もっと知的な関係で情報交換や感想を言い合ったりするだけの仲だ。なにげなしに何でも口に出来る。そんな会話の中で話してくれた、彼の料理を創作するときの要素は、描写、形、アイデア、主要素。
もちろん支払いも済ませて帰った。誤解が生まれるといけないからね。
l'Auberge Basque
D 307, vieille route de Saint-Pée, 64310 Helbarron/Saint Pée sur Nivelle
T. 05 59 51 70 50
www.aubergebasque.com
Map
1人約45ユーロ。水・木のランチコーズは23ユーロ。
1部屋90〜250ユーロ
Photos/F.Simon
ソウルから戻った後、ル・プーリグエン、サンパオロ、ハノイへ発つ前に、バスク地方へ向かった。ここでも5—6件、超お勧めレストランをご紹介しよう。
到着の矢先からレンタカーを借りて、シェ・マッタンに乗り込んだ。
飾り気のない本物さとグルメな上機嫌をお探しなら、ここがお勧めだ。庶民的な客層は、深紅の顔をした水兵、豚面をした年金受給者、家族連れや友達連れ等が肩を並べる。
ここに来たら、かの有名なアンコウとムール貝とラングスティンがベースのスープ、トッロ ttoro を頼もう。ポタージュは絹のように柔らかだが、味付けはしっかりしている。この気品ある逸品はじっくり味わってみる価値があるだろう。とにかく、僕の機嫌を取るにはこの一杯でで十分だった。
実は言うと、ずいぶんうまいコーヒーのデザートも頂いた。メニューに載っていない料理にはいつもいいサプライズが隠されている。
Chez Mattin
63, rue Evariste Baignol - Ciboure
T. 05 59 47 19 52
1人約 30 ユーロ
Map
Photos/F.Simon