ニコラ・サルコジが、先月行った発言を覚えているだろうか。
「フランスは、世界一の食文化を所有しており、それは我々に必須な遺産ともいえます。だから、2009年には、我々が筆頭となり、フランスの食文化遺産がユネスコの世界遺産に組み込まれることを提言したい考えです。」
ランド地方にある3つ星レストラン「レ・プレ・デュジェニー」のシェフ、ミシェル・ゲラールは、このユネスコに対するフランスの食遺産候補のアイデアに好意的だ。
この提案が、身動きの取れない領域へガストロノミーを追いやる原因になりませんか?
それはまったく逆ですよ。この動きは、フランス料理界に刺激を与え、新しいチャレンジへと拍車を掛ける、いいスタート地点になるはずです。フランス料理の何がすごいかっていう証拠を、無理矢理にでも証明しなくてはならなくなる。
フランス料理は不動ではありません。遺産を誇る価値をもちながら、永遠に成長し続けています。普遍的で、混血。他人の文化を盗んで自分の文化だといっているようじゃ、自分の文化の価値までなくしてしまいますからね。
どうして料理はいつもコンプレックスを感じてしまう傾向があると思いますか?
全く引け目を感じることはありせん。料理は、フランスの文化史に直結していて、政治にさえ関わっているくらいです。タレーランが、ウィーン会議でフランスを弁護した際、お抱え料理人のカレームを連れて行きましたよね。この2人が行った功績のおかげで、フランスは最悪の事態を免れることができました。料理人なしには解決しえなかった歴史的出来事といえるでしょう。たとえ、ウィーン条約の日にちを知っている料理人はいないにしても・・・。
フランス料理は、本当に世界一の料理だと思いますか?
味方の意見だから、というのではなく、正直フランス料理が世界一の料理だと思います。
フランス料理は、他国の料理には見られない技術を備えています。たとえば、ジャガイモを使ったレシピが150通りもあるとか。舌平目にしても同じことがいえるでしょう。
ある時代に、他国料理を取り入れながら、それらを大きく引き離すことができたのも、その特有な技術があったからこそ。世界中に名を馳せるグランシェフの多くは、フランス料理での経験を一度は積んでいます。そこにフランス料理への敬意が見られ、新しいレストランを開くとなったら、世界中のどこからだって、デュカスやロブションやガニェールたちに声がかかるのもいい例だといえるでしょう。なにより忘れてはならないのは、「レストラン」という言葉は、18世紀にフランス人が作った言葉である、ということです。