SIMON SAYS! JAPON

リヨン特集 シラに備えて必須ガイド

１月２６日から３０日にかけて、リヨンの街では、国際外食産業見本市という大規模なイベントが開催される。１６、５万人もの業界人を集めるこのイベントは、ボキューズ・ドール、パティスリー世界コンクール、などの要を備え、この街のレストランは、定休日も返上して、客を迎える。
その中から、僕のおすすめを数件ご紹介。
永遠のポール・ボキューズ
思い出に刻まれるだろう、情の熱いレストラン。フランス料理を代表するモニュメント。L'Auberge du Pont de Collonges は、人生で一度足を運ぶべきところだろう。
PAUL BOCUSE
40, rue de la Plage, Collonges-au-Mont-d'Or (69)
Tel : 04 72 42 90 90
コースメニュー 140 ユーロから

元気一杯のジョルジュ・ファイブ
理屈的に、このワインバーに入ると、乾杯の回数が多くなる。古いポルト酒、２０００以上ものワインの銘柄、イベリコ豚の一皿、ポルトガル産ハムロール、スモークした干したら、ウサギの腎臓のバルサミコ酢漬け、古いスティルトンチーズ、パルメザンチーズのガレット等。
GEORGES FIVE
32, rue du Boeuf, Lyon 5区
Tel : 04 72 40 23 30
一人約 35 ユーロ

無邪気なアンメ・フェスキルトゥプレ　
素朴で、たまに居心地よくて、家庭的無秩序感が漂う、小さなレストラン。イシダ・カツミシェフの料理が運ばれてくる際には、空に稲光が走る。リヨンの伝統的ビストロを再発明したような店。
EN METS FAIS CE QU'IL TE PLAÎT
43, rue Chevreul, Lyon 7区
Tel : 04 78 72 46 58
コースメニュー 38 ユーロから

美味しくて愛らしいマガリ・エ・マルタン
敏速で陽気ないいレストラン。洒落た内装に、格安のコースメニュー。
MAGALI ET MARTIN,
11, rue des Augustins, Lyon 1区
Tel : 04 72 00 88 01
19,5 ユーロ〜

Photos/F.Simon

馬鹿げた行為の快感

火星人でさえ、開いた口が塞がらないであろう、この類いのジェスチャーは、きっと、レストランでしか経験できない。
パンには手を付けずに、メイン料理を食べ終える。デザートメニューが渡される瞬間。ゴミ一つ落ちていない、綺麗なテーブルナプキンを前に、メートル・ドテルがたつ。綺麗に磨かれ上げた、ラマス・ミエット Ramasse-miette （パン屑を集める道具）を、またまた綺麗なモノグラム模様のナプキンの中から取り出して、振る舞う、完璧な仕草。寓話は、穏やかで、余韻が長く、勤勉だ。
ラマス・ミエットが、白いコットンの海を、泳ぎ、何度も行っては帰ってくる。そして、紋織りの入れ物の中へと、戻って行く。
これこそ、パラスレストランの現状だ。そんな馬鹿げだ仕草は、メートル・ドテル本人をも、楽しませる。意味はないが、なんとも愉快なジェスチャーは、他を探せば、たくさんあるだろう。一人で店に入ったのに、アペリティフは飲むかと聞いてきたり、フランボワーズの下に、ミントの葉を飾ったり、ワインの栓のにおいを嗅いだり。
今日の、僕の馬鹿げた行為はというと、写真のとおり、山のような生クリーム！中身が見えないくらいの生クリームを、もちろん僕は平らげた。最高の悦楽。ポール・ボキューズでの一こま。
Photos / F.Simon

ボキューズの銀河 1/2 軍隊的で決断的

フランスの料理界の中でも指折り有名な彼が、東京とリヨンを行きかう。穏やかで、確定した帝国の頂点にたち、優々と将来を眺めているシェフ、ポール・ボキューズ。彼は、心静かに世界をめぐり、心配事なく眠りにつくことができる、一人の男だ。１９店舗で１億ユーロもの売り上げをあげる彼の帝国は、彼の目の届かないところでも、きちんと管理され続けている。
先週、彼が世界に持つ店の中でも、一番熱狂的な、東京店の一つを訪れていた。彼の店は、東京だけで、８件もある。８６歳の高齢で、ここ数年は、健康状態も少し心配されていたが、にもかかわらず、その活躍ぶりはかわらない。他のシェフなら、魚釣りにでも出かけて暇をつぶしているだろうに、フランスで最も話題のこのシェフは、その活動をやめる気配もない。２０１１年には、宿泊施設「 Dock Ouest」を、本拠地「 L'Auberge du Pont de Collonges」から程近いところにオープンさせた。
アラン・デュカスは、自分の名前の所有権を所持していない時期もあったが、ポール・ボキューズは、長期間をかけて、その名前とその世界を著名にしていった。今日、彼は冗談なしで、レストランの前を渡る橋でさえも、自分の名前がつき、リヨンにある市場も、同様だ、と言い張る。確かに、グループの従業員は、４００人にものぼる。

ボキューズの世界の特徴は、その穏やかで愛情的な気立てのよさだ。規定された希少な時間が、「 L'Auberge du Pont de Collonges」にはある。

このまま行くと、２０１５年には、ミシュラン３つ星獲得、５０周年を迎える予定だ。時代を感じながらも、情熱的なガストロノミーを、この地で祝うべきだろう。感情的で、心底フランス的で、毎回僕らをほっとさせ、幸せにしてくれる。こんな世界が、僕らの家のすぐ近く、
Collonges-au-Mont-d'Orに存在するわけだ。TGVに乗って、是非足を運ばれてはどうか。

L'Auberge du Pont de Collonges
40, quai de la Plage
69660 Collonges-au-Mont-d'Or
Tel : 04 72 42 90 90

Photos / F.Simon

リヨン リュ・ル・ベック 先見できるマーケティング策略

いま話題の、ニコラ・ル・ベックの新レストランへ行った。
悪くない。が、あらかじめ予想できる。感激して鳥肌がたたない。ただ、プロが後ろにいるな、ということが明確なだけである。まだ封を開けられたばかりの新しい界隈で、マーケティング策略のきいたメ ニューは、ブラッスリーがもう少し良くなった感じで、巧妙さに長けた食材が使われている。
タラのタルタル（１２，８ユーロ）、木カブで焼いたブラック・アンギュスのはらみ肉（１９，５ユーロ）、生クリームが添えられたババ・オ・ロム（７ユーロ）等。

Rue Le Bec
43, quai Rambaud - 69002 Lyon
Tel : 04 78 92 87 87

月定休は、確かに便利だが、それをレストランの長所に数えていいものか。

Photo/F.Simon

リヨン オンメ・フェスキルトゥプレ

確かに、内装が素朴でちっぽけなこのレストランは、快適さにおいては確実性に欠け、家庭的な放埓さが感じられて、サービスはあきれ返るほど遅い。しかし、カツミ・イシダの料理が運ばれてきた際には、ついうれしくて、悲鳴をあげてしまう。まるで、空に光る稲妻のようだ。

明白で最強な料理。アスパラガスとイカ、小鳩、山きのこと調理されたほほ鳥、ヴェラの唐辛子と一緒にコンフィされた豚のほほ肉、りんごのやわらかデザート等々。

En mets fais ce qu'il te plait

43 rue Chevreuil - 69007 Lyon
Tel : 04 78 72 46 58
土日休み　ランチ１７ユーロから

Photo/F.Simon

リヨン ウルソン・キ・ボワ これは本当に気に入った

今回のリヨン散策は、本当にその甲斐があった。地方料理を作る日本人が経営する、このレストランみたいな店を新発見できたのだから。文化が華麗にフュージョンするのは、大抵こんなシチュエーションにおいてであろう。

機転と恍惚のみが目についた。

今回の旅の中でも、屈指のレストランに入るに違いない。すばらしい料理とアキラ・ニシガキの豊満な敏感さ。ジロル茸とグリルされた鴨肉、ゆずの香りのマサラソース。

こじんまりして応用の利いたレストラン特有の、愛らしい接客と落ち着いた内装。

L'Ourson qui Boit
23, rue Royale - 69001 Lyon
Tel : 04 78 27 23 37
日曜休み　コース１４ユーロから

Photo/F.Simon

リヨン ゴヴロー 過酷な古風主義

リヨン散策はまだまだ続き、この日は町を代表するレストランを訪問した。残念なことにも、それはシャルボニエールの、カジノ黄金牢屋敷のそばにある。
ジャック・マキシマンのもとで、修行を終えた優秀なシェフがつくる料理は、天空へまっすぐのびていた。（値段もそうだったが）。
グリルした後、ココット皿の中でコンフィにされたリュベロン産の大きな白アスパラガスに、巨大モリーユ茸のファルシ、ブルターニュ産のオマールえびと小ぶりのそら豆の一皿。その後に、甲殻類のエキスときのこのサバイヨンソースが添えられた、酸味野菜と４,５キロの鯛は、小船でつられたものだろう。

不平等なサービスは、客層自体が、いちゃいちゃのカップルから、かなりカジュアルな連中までと、さまざまだからに違いない。
リヨンへ帰るタクシーが、店の付けであるのは、うれしい。

Gauvreau
3, avenue du Casino - 69260 Charbonières-les-Bains
Tel : 04 78 87 79 79
日月休み　一人約１２０ユーロ

Photos/F.Simon

リヨン マガリとマルタン なかなかよかった

リヨンのグルメ周遊はまだまだ続く。そして僕のおすすめは、おいしくて愛らしいレストラン「マガリ・エ・マルタン」だ。
シンプルで活気ある料理。毎日こんな料理にありつけたらどんなにいいものか。
昼のコースは、今はやりのレストランで見かけるような主菜料理の半分の値段で、感じのいいカップルが経営するこの店の、巧みなサクセス具合が理解できる。
ウサギのプレッセ、鱒とラタトゥイユ、 カフェ・リエジョワや抹茶のババ、みたいな美味しいデザートに、陽気な店内の雰囲気と粋な内装。

Magali et Martin
11, rue des Augustins - 69001 Lyon
Tel : 04 72 00 88 01
土日休み　一人約３８ユーロ

Photo/F.Simon

リヨン ル・ベック＆タカ 予想外の復讐

リヨンの町内で店舗数を増やすことは、リスクの高い賭けだったものの、ニコラ・ル・ベックは、その見返りがあることを、察知していた。そして、うれしいサプライズにも、ここで頂いた僕らの夕食は、大成功だった。日本産アサリとわさびのアスパラガス、新豆のクリームとチョリソーで調理された、分厚いタラ、青りんごのフレッシュ感がいいライムのスフレ等、どれも文句のつけようがないものだった。


Le Bec-Taka
14, rue Grolée, 69002 Lyon
Tel : 04 78 42 15 35
日月休み　
コースメニュー４０ユーロから
アラカルト約８０ユーロ

Photos/F.Simon

リヨンの大生還

数日前のフィガロ紙で、リヨンにあるおすすめレストラン特集が掲載された。同僚のアレクサンドラ・ミショーと共に、著名店から秘密の店まで、調査し食べ歩いたものを、ここでもご紹介。

長年、リヨンはその栄誉に関して右に出るものはいない、と思い続けてきた。強情な鉄人ガードマンが、真剣にこの町をかくまっていたのだ。その名も、ポール・ボキューズ。
町自体は放し飼いだったにせよ、長い目で見てみると、実は南京錠がしっかりかかっていた。
しかし、時は流れて、ポール・ボキューズもようやく降参し施錠をはずした。彼は今でも健在ではあるものの、若い世代へエールを送り、彼らへこの愛しい故郷へ戻ってくることを、常に呼びかけている。
その結果、ヌーベルヴァーグが訪れて花咲かせ、前世代のパラノイアを感じることなく、仕事ができるようになった。
舞台はすっかり解放され、ニコラ・ル・ベッ クのような才能あるシェフがその地位を確かのものにし、無数のグルメなレストランが、さまざまなスタイルで誕生した。
Le 126, Ourson qui Boit, Magali et Martin そして、すでに著名なGauvreau, Mathieu Viannay, chez la Mère Brazier 等々。きっと、今年最高のニュースになるに違いない。

クリスチャン・トゥトゥドワは失態だった。それでも、唯一の救いといったら、客席からの眺望だろう。
きっと、鱸の切り身に海草とカブのタルタル（３８ユーロ）以外のものを、選ぶべきだったのだ。うまくもなく、デザインにこった円筒状の形をしたそれは、火の入れ方さえまばらだった。
内装は味があって、客層もそれを期待してるのだろう。古代リヨンの歴史ある町並みの中に位置する、アンチィカイユ界隈から眺めるその眺望だけは、最高だった。

Christian Tetedoie
1, rue de l’Antiquaille, Chemin neuf - 69005 Lyon
Tel : 04 78 29 40 10
無休　一人約８０ユーロ

Photos/F.Simon