悲惨なエビサラダの後、エリック・ゲランのレストラン「ラ・マール・オーズワゾー la Mare aux Oiseaux」に予約を入れた時点で、この日はいい日になる予感がした。
確かに行く前からこんな風に期待してしまうことは危険である。失望が一瞬にしてソワレを台無しにしてしまうことだってあるからだ。まぁ確実な料理を出す店ではそんな状況に陥ることはまずないけれど。
なんと言う名前の料理だったかは忘れたが、ちょっと洗練されすぎた名前を持つこの料理は本当にうまかった。
今回はこの地方に住んでいるステファン・ホフマンが一緒だった。
彼がこの地方を描写する口調はおもしろく、やさしい皮肉と無表情で発する辛口コメントにはこちらが吹き出さずにはいられなくなる。僕がこの地方へ来るたびに、彼は持ち前の鉄砲を四方に打ちまくっているわけだが。
ボールの向かいの小さな海岸にあるプーリガンのレストランについて批評することには、少しためらい心があった。というのも、牡蠣によく似た花崗岩で出来た小さな村のあるボール地方は、些細な楽しみの一つでもあるからだ。街は本当にオープンで明快だ。
僕はゆっくりとジム・ハリソンの最新本のページをめくっていた。アメリカのオデッセイを思わせる世界。旅の途中に読むと、時の流れに裏地を縫い付けているような気分にさせてくれる。
Photos/F.Simon