これはよかった。満喫した。フィガロスコープの取材で訪ねたいいレストランをここで速報。
パリが、日本料理に対する小児的簡略主義から解放されるまで、まだ数年の月日が必要だろう。アジア系の人たちによって冷笑的に経営されている偽物の日本料理レストラン。僕らの料理よりずっと歴史のある日本料理が、残り物のサーモン寿司で要約されるはずがない。しかもそんな寿司は日本には存在しない。
だから、もしリシェール通りにあるこの店に偶然行く機会があったら、シナリオが何も理解できないであろう。なぜなら、ここは寿司もさしみもメニューにない、居酒屋だからだ。この類いのレストランは、フランスでは大受けするに違いない。しかもシェフがキョウイチ・カイときたらなおさらだ。彼はNobu Zuma 等、世界中を回り、ようやく今回その実力を披露するためにパリへやってきた。
料理。寿司が少しだけ。だからマグロも少しだけ。シェフが環境保護のためになるべく避けている食材だ。ナイスポイント。
感動的な価格なのに、悪魔のような正確さと、背筋がのびるような風味の真実さ。敬意まで感じられる本物の料理は、エビの天ぷら、野菜と豆腐のステーキ等。
パリでここしばらく感じられなかった、風味のダンスとでもいうものに、ぎょっとさせられた。
夜は、瞬間的な風味が強いガストロノミーなコースが35ユーロ。ワンランクアップする。
白味噌で和えたすずき、ワカメと一緒に揚げた蟹料理、にんにくと醤油で味付けしたリブロースステーキ等。
静寂で明るいデザートには、どうしようもない黒ごまのアイスクリーム。粘土みたいな格好で出てきたが、口の中ではすごかった。
透明感のあるランチ、2人で44ユーロ
Kiku
56, rue Richer - 75009 Paris
T. 01 44 83 02 30
Map
Photos/F.Simon